×

ニュース

原発政策 「上関」地元 不安と期待 「島根」では慎重論相次ぐ

 原子力発電所の稼働に前向きな自民党の参院選圧勝を受け、中国電力の上関原発が計画されている山口県上関町には不安と期待が交錯した。中電が年度内にも安全審査を申請する方針の島根原発(松江市鹿島町)の地元では、再稼働に慎重な姿勢を政権に求める声が相次いだ。

 「多くの国民が再稼働や新設に反対なのに自民党は原発の訴えを控えた。争点隠しに見えた」。上関原発を建てさせない祝島島民の会の清水敏保代表(58)が語気を強めた。「しばらく国政選挙がないことを利用し、なし崩しで建設も進めてくるはずだ」と警戒する。

 自民党は選挙戦で、他党が主張する年限を定めた「原発ゼロ」に反対。安全を確認した原発は動かす方針を示し、「地元自治体の理解が得られるよう最大限努力する」とアピールした。

 福島第1原発の事故で準備工事が中断した上関原発。計画推進派の町議でつくる原電推進議員会の右田勝会長(72)は「上関原発を進める土台が整ってきた」と歓迎した。山口県内の自民党の国会議員は比例代表を含めて7人になる。「大きな力になる」とした上で「事故を踏まえた安全対策と建設について、国民の理解を得る努力」を求めた。

 中電が安全審査の申請準備を進める島根原発2、3号機。松江市鹿島町の農業中村栄治さん(77)は「稼働が現実味を帯びた」と受け止め、「事故の原点に立ち、自然エネルギーの普及に力を注いでほしい」と訴えた。中電の安全対策に期待する鹿島町古浦自治会長の亀城幸平さん(63)は「政権はあぐらをかかずに安全性を高める政策を追い求めてほしい」と話した。

 松江市の松浦正敬市長は「再稼働には慎重を期した議論と地元への丁寧な説明が必要」。島根県の溝口善兵衛知事は徹底した安全審査が前提とし「再稼働を求める場合には国が責任を持って判断し、地元の理解を得られるようにしてほしい」とコメントした。

 中電は選挙結果について「コメントする立場にない」としている。(久保田剛、樋口浩二、山瀬隆弘)

(2013年7月23日朝刊掲載)

年別アーカイブ