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前文で核禁条約触れず 平和条例 検討会議、賛否割れる

 広島市議会の政策立案検討会議は15日、制定を目指している平和推進条例のうち理念を示す前文で、今年1月に発効した核兵器禁止条約に触れないと決めた。昨年12月にまとめた素案では記載がなく、市民から禁止条約の意義などを盛り込むよう求める声が寄せられたが、検討会議では賛否が割れ、素案の表現を見直さない形で決着した。

 検討会議は各会派の代表者でつくり、条例案を練っている。この日は市議会棟で前文について協議。素案に対する市の意見公募などで、核兵器禁止条約の発効について「重要な成果として入れるべきだ」「市議会は禁止条約に賛同しているのに、なぜ触れないのか」といった指摘が18件あったとして、議論した。

 出席した市議からは両論が出た。賛成側は「核兵器が国際法上で違法となった意義は大きく、無視できない」「禁止条約は市の悲願で、発効の事実を記述したい」などと主張した。

 一方で、素案には「核兵器の廃絶に向けては、世界的にその機運は高まっている」との一文があるとして、「高まりの中に条約も含まれ、記載は要らない」「核保有国は条約に反対し、実効性に疑念がある」との慎重論も上がった。

 検討会議は昨年12月、出席者の意見が割れた場合は素案を維持すると申し合わせている。このため、前文については変更せず、禁止条約の記載は見送ることになった。終了後、検討会議代表の若林新三市議(市民連合)は「素案は全員が合意して作っており、修正や削除をする場合は全員の合意が必要だ」と説明した。

 素案に対しては1~3月に延べ1043件の意見が集まった。「平和記念式典を厳粛の中で行う」とした6条2項に関するものが459件で最も多く、維持を主張したり、「厳粛」の削除を求めたりする意見が出ている。(新山創)

(2021年4月16日朝刊掲載)

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