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提訴12年 にじむ悔しさ 原告団長「仲間に報告できぬ」

 岩国爆音訴訟の最高裁判断を受け、原告団長の津田利明さん(74)=岩国市桂町=は悔しさをにじませた。提訴から12年余り。亡くなった原告も多い。「一緒に闘ってきた仲間に報告できない」と肩を落とした。

 自宅は基地から1・5キロ。米軍機が飛ぶたびに爆音がする。事故のリスク回避と騒音軽減を目的とした滑走路沖合移設事業だったが、新たな騒音をもたらす米空母艦載機移転の「受け皿」となることが許せなかった。2009年3月、岩国基地を巡る初の爆音訴訟を提起し、654人の原告団をまとめてきた。

 19年10月の広島高裁判決でも、沖合移設で騒音が一定に軽減したとする一審山口地裁岩国支部の判断はほぼ踏襲された。米軍機の運用に国の支配が及ばないとする「第三者行為論」を採用し、飛行差し止め請求を退けた。「国が基地を使わせて、知らんじゃすまん」

 18年3月に艦載機移転が完了、米軍機は約120機に倍増し「イワクニ」は極東最大級の基地となった。中国の海洋進出に対抗する米国はインド太平洋地域の安全保障を重要視し軍事拠点化は加速する懸念がある。

 そんな中、今年3月の基地南側の騒音測定回数は10年度の沖合移設以降、月別で最多を記録した。「好き放題されて基地の機能は強化されている。静かで安全な岩国を子や孫に残せないのか」。切実な願いはまたも司法の壁にはばまれた。(有岡英俊)

(2021年4月16日朝刊掲載)

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