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被爆 遺伝的影響見えず 放影研 戦後新生児調査を再解析

 放射線影響研究所(放影研、広島市南区)は16日、前身の原爆傷害調査委員会(ABCC)による戦後の新生児調査を再解析した結果を発表した。親の被爆と子の先天性障害などで得られた結果は、過去3回と大きな違いはなかったとして「統計的に有意な関係は見られない」と判断した。

 今回の作業は、2011年の東京電力福島第1原発事故で放射線の遺伝的影響に関心が高まったとして、15年に始めた。1956年、81年、90年に続き4回目。日米の科学者が03年に承認した線量推定方式「DS02」を参照したほか、最新の統計手法を用いた。

 再解析の対象は、ABCCが1948~54年に調べた新生児約7万7千人のうち、多胎児などを除く約7万1千人。新生児の障害、産後7日以内と14日以内の死亡の3ケースで、両親の被爆との関連を調べた。

 その結果、親の被爆で障害や死亡のリスクが増す傾向が見られたが、統計的に意味のある差とまでは言えなかったという。山田美智子・臨床研究部放射線科長は「リスクの増加傾向には被爆者の貧困などの影響もあるとみられる。解明へ、多様な手法で迫る必要がある」と説明した。

 放影研は被爆の遺伝的な影響を調べるため、被爆2世の死亡率や病気の発症率も調べているが、現時点で影響は確認されていない。丹羽太貫理事長は、2世と親のゲノム(全遺伝子情報)解析について「慎重な議論が必要だが、私自身はやりたいと考えている」と述べ、議論を進めていく考えを示した。(明知隼二)

(2021年4月17日朝刊掲載)

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