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「平和的生存権を侵害」 安保法訴訟 広島地裁で本人尋問

 集団的自衛権の行使を容認する安全保障関連法は違憲として、広島、山口県の住民たち309人が国に損害賠償などを求めた訴訟の本人尋問が21日、広島地裁であった。広島県被団協の佐久間邦彦理事長(76)たち原告5人が「平和に生きる権利が侵される」などと訴えた。

 佐久間理事長は「集団的自衛権の行使で、核兵器を持つ米国とともに海外で戦争ができるようになる。納得できない」と強調。太平洋戦争中、呉市で空襲に遭った原告団の杉林晴行共同代表(81)は「日本が戦場になり、国民が死んでからでは遅い」と批判した。

 米空母艦載機が移転した米軍岩国基地がある岩国市の井原勝介前市長(70)は「基地が攻撃目標にされる恐れがある。基地の存在が市民生活を脅かし、平和に生きる権利を侵されている」と指摘した。

 訴状によると、国が安保関連法を制定したのは憲法9条に違反し、戦争に巻き込まれるかもしれないとの恐怖で精神的苦痛を受け、平和的生存権を侵害されたとして、国に対し原告1人当たり10万円と、同法に基づく自衛隊の出動差し止めを求めている。

 安保法制違憲訴訟の会によると、全国22地裁・地裁支部で起こされた同種訴訟はこれまでに10地裁で判決が出ており、全て原告側が敗訴。控訴審判決が出たのは2件で、いずれも原告側の請求が退けられた。(山田英和)

(2021年4月22日朝刊掲載)

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