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海外派遣 大きな転換点 海自呉出港あす30年 活動拡大 危惧も

 訓練目的以外では自衛隊初の海外派遣となる湾岸戦争後のペルシャ湾掃海派遣部隊が、呉市の海上自衛隊呉基地などを出港した日から、26日で30年となる。海外派遣はその後、陸上、航空自衛隊も含めて回を重ね、任務も復興支援、国連平和維持活動(PKO)、難民救援などに拡大。ペルシャ湾派遣は歴史的転換点となった。

 1991年4月26日午後3時。呉市昭和町の海自呉基地Fバースから、掃海母艦はやせと掃海艇ゆりしまが、ゆっくりと護岸を離れた。湾岸戦争(同年1~2月)の戦後貢献策として、横須賀、佐世保両基地からの4隻と共に派遣された掃海部隊6隻のうちの2隻。イラク軍が敷設した機雷の除去を任務に、家族や隊員に見送られながら、炎天のペルシャ湾へ向かった。

 国際貢献か、戦争への一歩か―。国内では賛否両論が渦巻いた。政府は、法的根拠に当時の自衛隊法99条の「機雷等の除去」を挙げ、公海を活動範囲に含むと解釈。国際貢献を掲げた。一方、憲法が禁じる「海外派兵」に当たるなどとする反対運動も激しかった。世論が割れる中、隊員たちは188日間で34個の機雷を除去し、無事故で帰国した。

 以後、政府は海外派遣の実績を積み上げていく。防衛省によると、派遣先はこれまでに約30の国と地域、派遣隊員は延べ約6万人に上る。2007年には旧防衛庁の「省」昇格に伴い、海外派遣は自衛隊の「本来任務」に位置づけられた。

 政府が憲法解釈をなし崩し的に変え、自衛隊の活動範囲に歯止めが利かなくなっているとの危惧も絶えない。早稲田大の水島朝穂教授(憲法)は「日本独自の外交が展開できず、軍事的協力を求める米国に追従してきた。国際政治の中で自衛隊が利用されている」と指摘する。(池本泰尚)

(2021年4月25日朝刊掲載)

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