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証言・伝承 研修1年短縮 広島市本年度から 被爆者の負担軽減図る 「広く語り継ぐ体制に」

 広島市は本年度から、被爆者が自らの体験を語る「被爆体験証言者」と、証言者の記憶と平和への思いを語り継ぐ「被爆体験伝承者」の研修期間をそれぞれ1年間短縮し、1年と2年とする。高齢化する被爆者の負担を減らして証言を始めやすくするとともに、伝承者を育てて記憶の継承につなげる。(小林可奈)

 証言者と伝承者の研修制度は2012年度に始めた。研修を終えた人は、原爆資料館の運営などを手掛ける広島平和文化センター(中区)の委嘱を受けて、資料館や派遣先の学校などで、あの日の記憶や、被爆者から受け継いだ証言などを語っている。

 委嘱を受けるための研修では、原爆被害や核兵器を巡る世界情勢などの10回程度の講義を受講する。その後、証言者は自らの体験、伝承者は「師弟関係」を結んだ証言者から聞き取った体験や思いを基に原稿を仕上げ、両者とも表現方法を磨く実習をする。

 本年度からは、証言者は原稿の執筆期間を短縮。伝承者は、証言者からの聞き取り開始時期を従来の2年目から1年目に前倒しし、期間も1年程度から9カ月に短縮する。研修を担当する職員は1人増やして2人体制とし、内容を維持しながらスピードアップを図る。

 本年度は参加者を今月中旬から募り、研修を7月ごろから始める予定でいる。順調に修了すれば、証言者は22年4月、伝承者は23年4月、それぞれ委嘱を受けてデビューする。

 市などによると、12年度に32人いた証言者の研修への応募は、20年度に初めてゼロとなった。活動を続けてきた証言者も死去や健康上の理由で減っており、本年度に活動しているのは4月1日時点で35人となる。

 伝承者の研修への応募も20年度は42人で最少になった。4月1日時点で活動中の人は、15年度の50人から増加が続いていたが、本年度は前年度比1人減の149人と、初めて減少した。  市平和推進課は「被爆者の高齢化が進む中、一人でも多くの方に証言者や伝承者として協力してもらい、被爆体験を広く語り継ぐ体制にしたい」としている。

 市は併せて、活動中の証言者の負担を減らすため、「弟子」となる伝承者の実習に立ち会う頻度を、従来の全3回から原則1回程度に減らす方針。証言者が立ち会えない分は、市やセンター職員がカバーする。

(2021年5月13日朝刊掲載)

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