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平和式典 縮小開催 880席招待者のみ/内容例年通り 広島市発表

 広島市は14日、今年の8月6日の平和記念式典を、昨年と同様に大幅に縮小して開催すると発表した。会場の平和記念公園(中区)の参列者席は、例年の1割の約880席に減らす。新型コロナウイルスの感染状況を踏まえて、密集や密接を避けるための感染防止対策が必要と判断した。

 市によると、約880席は、2メートルの間隔を空けて芝生に置けるいすの最大数となる。国が、屋外でマスクを外して人が並ぶ際に求めている指針に沿った。市市民活動推進課は「限られた席数となるが、できるだけ多くの被爆者や遺族に参列してほしい」としている。

 参列者席は招待者向けとなる。招く顔ぶれは現時点では例年通りとしており、全国の都道府県遺族代表や国内駐在の各国大使たちとなる。今年の式典出席に意欲を示してきた国連のグテレス事務総長にも近く招待状を出すが、参列できない場合はビデオメッセージを依頼する。一般席は昨年に続いて設けない。

 式次第は例年通りの予定で、市長の平和宣言や子ども代表の「平和への誓い」などをする。昨年、新型コロナの影響で訓練が十分にできないことなどを理由に中止したハトを放つ行事は、今年は実施する方向で関係団体と調整している。

 市はこの日から、松井一実市長が式典の縮小開催について語る動画を、動画投稿サイト「ユーチューブ」で配信している。松井市長は「それぞれの場所で心の中で8月6日の式典に参加していただき、共に平和を祈り、思いを一つにしてほしい」と呼び掛けている。(水川恭輔)

被爆者「やむを得ない」 平和発信に期待

 8月6日の平和記念式典の2年連続の大幅縮小を広島市が発表した14日、被爆者には「やむを得ない」との受け止めが広がった。核兵器禁止条約が発効した年の開催縮小を残念がる声が上がる一方で、緊張が高まる国際情勢に対するメッセージの発信を求める意見も出た。

 「昨年よりも感染状況はさらに厳しい。2年連続の縮小は寂しいが、中止になる行事も多い中、開かれるだけでもありがたい」。広島県被団協(坪井直理事長)の箕牧(みまき)智之理事長代行(79)は、冷静に受け止めた。

 昨年に続いて参列者は1割ほどに絞り込まれ、一般客が自由に座れる席は設けられない。「若者による合唱など、次世代が参加するプログラムはぜひ継続してほしい」と望んだ。

 核兵器禁止条約は1月に発効し、来年1月には初の締約国会議を控える。もう一つの県被団協の佐久間邦彦理事長(76)は今夏の式典縮小を残念がった上で「今はコロナと戦いながら何ができるか考える時期。式典は縮小しても継続し、核兵器廃絶への意志をつなぐことが大切だ」と強調した。

 国内で新型コロナが猛威を振るう一方、国際情勢は米中間の緊張の高まり、中東での武力衝突など、厳しさを増している。被爆者で原爆資料館元館長の原田浩さん(81)は「式典で広島がどのような平和のメッセージを発信するのか、世界が注目している。被爆者の高齢化が進む中、広島の役割についてあらためて議論を深める時が来ている」と話した。(明知隼二)

(2021年5月15日朝刊掲載)

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