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戦争の悲しさ刻む一冊 笠岡市遺族連が終戦75年誌 小中高生の願いも

 笠岡市遺族連合会が、終戦75年の記念誌「ふるさと」を作製した。同会による初めての発刊。同会の歴史をたどり、戦争で家族を亡くした悲しみをつづっている。市内での平和式典や戦没者追悼式で発表した小中高生の願いや誓いも紹介し、平和の大切さをあらためて考える一冊にした。(谷本和久)

 A4判180ページ。戦没者や遺族の郷里への思慕をタイトルにした。3部構成で、「遺族会の歩み」では、前身となる小田郡遺族連合会が1947年に発足して以降の出来事を紹介。市内各地区の慰霊祭や市戦没者追悼式の状況、遺児支援事業として実施されていた神島臨海学校の様子を伝えている。日本遺族会や県遺族連盟の歴史も載せている。

 「遺族は今」では、戦争で家族を亡くした会員17人の思いを紹介。物心ついた時に父がいなかった寂しさ、戦死の知らせに泣いた記憶、夫を亡くした後に魚の行商や夜の内職で子どもを育てた母の思い出などのほか、平和への願いもつづっている。

 「未来につなぐ平和の詞」では、子どもたちの言葉や公募の作文を掲載。「戦争が起こりそうになった時私は最後まで反対の声をあげ続けます。それが祖父の願い…」などの誓いも紹介している。

 笠岡市制が施行された52年に小田郡遺族連合会から改名した市遺族連合会は現在、会員約700人。平均年齢は80代に達しているという。記念誌は戦後75年の昨年から編さんを始めたが、新型コロナウイルス感染症の影響で遅れ、4月に千部が完成。市内の小中高校などにも配った。

 西部ニューギニアで父を亡くし、今も遺骨収集活動を続ける秀平良子会長(80)は「次代へ戦争の悲惨さや遺族の悲しみを伝えていかなければならない。多くの人に記念誌を読んでもらえたら」と願う。

 希望者には協力金として1部500円で配布(送料別)している。市遺族連☎0865(63)2238。

(2021年5月15日朝刊掲載)

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