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社説・コラム

天風録 『宇宙強国を名乗るなら…』

 宇宙で水鉄砲を撃つとどうなる―。NHKラジオ子ども科学電話相談で小学1年が尋ねた。専門家の答えは「水はどこまでも真っすぐ飛ぶよ」。コロナで息苦しくとも、子どもの好奇心はどこまでも広がっているようで安心する▲水鉄砲ならかわいいけれど、実際の宇宙の「戦い」が今、熱を帯びる。数百の軍事衛星が飛び回って他国内の軍隊を偵察、警戒する。よその衛星に攻撃する「キラー衛星」の開発も進む。ドンパチが始まらねばいいが▲「世界の先頭集団に入った」。中国が声高らかに誇ったのは宇宙開発の偉業である。先日、火星に無人探査機を着陸させた。旧ソ連、米国に次いで3カ国目。技術力の高さは間違いない。1週間後には気候や地質の調査を始める▲2年前、世界で初めて月の裏側に無人探査機を着陸させた。来年には宇宙ステーション「天宮」を完成させる予定。米ロに追いつき追い越せと進出を加速させる。目指すは「宇宙強国」▲だがマナーはいただけない。ロケットを制御せず地球に落下させるなど、宇宙ごみの処分法が批判を浴びる。海洋強国でも宇宙強国でも、わが物顔は通じない。子どもたちの宇宙に抱く夢が膨らむような開発を。

(2021年5月17日朝刊掲載)

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