×

ニュース

震災・東アジア…志を発信 ヒロシマアートドキュメント 

 「ヒロシマアートドキュメント2013」が、広島市中区袋町の旧日本銀行広島支店で開かれている。今年で20回目となる国際現代美術展。日本やフランスで活動する計14組の作家が多彩なメッセージを発している。

 中空に揺れるちょうちんに貼られているのは、新聞紙の一部。東日本大震災の被害を報じる写真を切り抜いている。沼尻昭子(千葉県)「730日のオマージュ」は、2年余り前の震災を静かに、鮮やかに思い起こさせる。

 「どうしても捨てられず、ためていた」という震災直後の新聞を素材にした。盆ちょうちんのイメージも宿し、犠牲者への追悼がにじむ。

 中国出身の范叔如(ファンシュウルウ)(広島市)は、半透明の寒天を床に広げて「海」と題した。日本列島や台湾など陸地の形をくりぬいて、東アジアの海を立体的に浮かび上がらせる。

 寒天だけに、極めてもろくデリケートな印象。紛争や汚染を持ち込むまい、というメッセージだろうか。

 フランスの3人は、それぞれ映像作品を出展した。このうちジャン・リュック・ビルムートの「明日2012/13」は、東日本大震災の被災地や被災者に取材。静止画をスライド上映し、アートと報道写真の合間を漂うようだ。

 ヒロシマをアートの発信地にと、フリーキュレーターの伊藤由紀子(広島市)たちが企画。ささやかな規模だが志を感じる。8月3日まで。=敬称略(道面雅量)

(2013年7月27日朝刊掲載)

年別アーカイブ