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つないだ希望の火 家族に感謝 挑戦へ決意 聖火リレー県内スタート

 広島県内で17日に始まった東京五輪の聖火リレー。新型コロナウイルスの収束や平和への願い、亡き家族への感謝…。ランナー86人はさまざまな思いを胸に平和記念公園(広島市中区)に集い、「トーチキス」で聖火をつないだ。(山崎雄一、千葉教生、小山顕)

 最初に聖火をトーチにともした坂井孝之さん(74)=東区。兄の故義則さんは1964年東京五輪の聖火リレーで最終走者を務め、今回の東京開催が決まった翌年の2014年に亡くなった。生前「五輪に関わりたい」と言い続けていたという。孝之さんは「常に心の中にいる兄も一緒に聖火をつないでくれたと思う」と笑みを見せた。

 祖父が中区竹屋町で、父は長崎市で被爆した西区出身の獣医師野田衛さん(63)=川崎市=は「コロナ禍の中で平和や命の重みを感じる。平和記念公園でできたことはありがたい」。18年の西日本豪雨で坂町の自宅が全壊した坂中3年の山下蒼太さん(14)は今、自宅が修復されて住めるようになった。「被災地は復興している。周囲の支援があって今がある」と語った。

 19年に亡くなった祖父の遺骨をペンダントにしのばせたのは、舟入高(中区)出身で名城大1年の谷本七星さん(18)=名古屋市。「スポーツが大好きだったおじいちゃんに見せたかったけど、一緒に走れたかな」。昭和高2年の鶴田基起さん(17)=呉市=の祖父は今月、がんが見つかり、この日入院した。「無事に走ったよと一番に言いたい」。握りしめたトーチは病院に届けるという。

 「コロナは子どもに我慢も強いている。リレーのように子どもと社会をつないでいきたい」。21年間にわたり、子どもの相談電話を続けるNPO法人「ひろしまチャイルドライン子どもステーション」(中区)の上野和子理事長(70)=佐伯区=は今後の活動への決意を新たにした。陸上部に所属する比治山女子高3年の脇坂里桜さん(18)=府中町=は「100メートルで日本記録を出し、五輪に行くのが目標」と誓った。

 一方、感染の急拡大を受けて参加できなかった人もいた。自身の体調も考えて辞退した三次市の冨久正二さん(104)は、自宅で中継映像を見守り「周りから励まされて完走しようとやる気になっていただけに、走りたかった。また、新たなことに挑戦したい」と語った。

(2021年5月18日朝刊掲載)

広島に聖火 無観客式典 平和公園 86人が「トーチキス」

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