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社説・コラム

[NIE これ読んで 担当記者から] 核禁条約 豪で8割賛同

■ヒロシマ平和メディアセンター・湯浅梨奈

各国の市民が取り組み

 オーストラリアは、核兵器禁止条約の実現に貢献した核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN(アイキャン))が2007年に結成された地だ。しかし、米国の「核の傘」への依存を打ち出す政府は、条約参加に後ろ向き。そんな中、国民の8割が条約に賛同、という世論調査の結果が出るなど変化も見えてきた。(5月10日付朝刊)

 1月22日に核兵器禁止条約の参加国が50に達し、効力を持つ正式な条約になりました。一方で、この条約に批判的な国が少なくありません。自らは核兵器を持たないが、世界最強の核戦力を持つ米国に守ってもらう、という国々。オーストラリアはその一つです。

 しかしICANオーストラリア代表のジェム・ロムルドさん(34)によると、米国との安全保障条約や、両国間で交わした正式な外交文書に「核抑止力でオーストラリアを守る」と約束する言葉はないそうです。野党の労働党は2018年、政権を握れば条約参加を目指すと宣言。その年の世論調査で、国民の79%が条約支持だと答えました。

 オーストラリアでは1952~63年、英国が核実験を行いました。そこに暮らす先住民アボリジニたちは事前に知らされないまま、健康被害を受けました。その事実に衝撃を受け、ロムルドさんはICANに加わろうと思ったそうです。

 核兵器に苦しめられた人たちは、広島と長崎だけでなく世界にいます。核兵器禁止条約に対する政府の考え方や、市民の期待は、国ごとに違います。不定期連載「核禁条約 私の国では」を通じて、各国の市民が条約を広めるためどれだけ頑張っているのか、知ってほしいと思います。世界が核兵器を手放すまでの道のりは決して短くなくても、一人一人の意識や地道な呼び掛けが、核なき世界の実現には欠かせません。

(2021年5月23日朝刊掲載)

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