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社説・コラム

天風録 『忘れてはならないこと』

 国家によるテロだと非難されても、どこ吹く風のようだ。ベラルーシが飛行中の民間旅客機を戦闘機で誘導し、強制着陸させた。乗客のうち反体制派の男性1人を拘束する。大騒動の目的はそこに尽きるらしい▲ベラルーシと言えば「欧州最後の独裁者」ルカシェンコ大統領である。昨年夏の大統領選の不正を追及した大規模デモでは、多くの参加者が拘束され、拷問も受けたとされる。今回のハイジャックまがいも、大統領が命令したという。さもありなん▲そんな外電に接し、無力感が増す。欧米は制裁を科して大統領選のやり直しを求めたものの効き目はない。私たちマスコミもベラルーシの「その後」を伝え切れたと胸を張れる立場ではない▲ミャンマーも状況は似る。軍のクーデターから間もなく4カ月。戒厳令の下、不服従運動は今も散発的に続くが、現地からの報道はコロナ関連のニュースに隠れがち。「世界から忘れ去られてしまう」と、市民は日増しに危機感を強めているようだ▲1カ月ぶりに拘束を解かれ帰国したジャーナリスト北角裕樹(きたずみ・ゆうき)さんは「勇敢なミャンマーの人たちこそ未来への希望」と語った。国際社会は今こそ、その希望を共有しなくては。

(2021年5月25日朝刊掲載)

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