×

ニュース

平和願う遺志 受け継ぐ 4月に急逝 被爆者岡田さんの孫富永さん 祖母の言葉伝える

 国内外で被爆証言活動を続け、4月10日に84歳で急逝した岡田恵美子さんの孫の富永幸葵(ゆうき)さん(23)=広島市東区=が28日、当初登壇する予定だった祖母に代わって米シカゴ・デュポール大のオンラインイベントで語る。身近に受け継いだ平和への願いを伝える、新たな一歩をしるす。(湯浅梨奈)

 生前の岡田さんを知る広島市出身の宮本ゆき准教授たちが企画した「被ばく」を問う学内向け講演会で、ウラン鉱山や核兵器研究拠点があるニューメキシコ州の先住民らと参加。「ここで考えたことを周りにも話し、自分でできる行動につなげて」と、祖母がよく語った言葉を述べるつもりだ。

 富永さんは小学6年のとき、核拡散防止条約(NPT)再検討会議の準備委員会に合わせて岡田さんと渡米。国連本部で「核をなくす勇気を持とう」と自分もスピーチした。原爆で姉を失い、病気に苦しんだ体験から核兵器廃絶を懸命に訴え、「未来は変えられる」と説く祖母の姿は身近だった。

 しかし岡田さんの死後に宮本さんから「被爆3世として語ってほしい」と打診されると「祖母と同じように伝えることはできない」と悩んだ。背中を押したのは「自分が得意なことを生かして思いを伝えなさい」という生前の祖母の助言。ダンサーの富永さんは、踊りを通して平和の尊さを発信している。「学生と同世代の一人として、祖母と私のことを話すならできる」

 富永さんは昨年、シンガー・ソングライターのHIPPY(ヒッピー)さん(40)=安佐南区=が岡田さんの体験証言を織り交ぜて制作した映像作品「日々のハーモニー」に一緒に出演。そのHIPPYさんの協力を得て、新たな映像作品の企画も進めている。来月からは東京でダンサーとして活動しながら、自分の思いを表現していく。「ダンスや音楽の力は世界共通。見てくれる人たちが、平和について考える入り口をつくりたい」

(2021年5月27日朝刊掲載)

年別アーカイブ