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ヒロシマ継承 あの日が糧 オバマ氏訪問 立ち会った赤畑さん・作原さん

平和公園を案内 証言聞き取りも

 広島市立大2年赤畑利奈さん(19)=中区=と広島大4年作原愛理さん(22)=東広島市=は2016年5月27日、現職の米大統領として初めてとなるオバマ氏の被爆地訪問に立ち会った。中区の平和記念公園であった訪問行事に参列し、歴史的瞬間を心に刻んだ。あれから5年。2人はその経験を原動力に、被爆者の記憶や思いを受け継ぐ活動を続けている。(小林可奈)

 「5年前の体験が今の私を形作っている」。赤畑さんは、吉島中(中区)の3年生だった当時を振り返った。被爆地広島について国際的な視点から考える契機となったという。

 オバマ氏の訪問は多くの海外メディアが報じた。原爆投下から71年を経て、世界の注目を集める被爆地の姿に「ヒロシマは世界の今につながっている」と感じた。視野が広がり、「被爆者から受け継いできた記憶や思いをもっと多くの人と共有したい」との思いが芽生え、膨らんだという。

 舟入高(中区)に進学後は、演劇部で原爆劇に挑んだ。カナダ・モントリオール市への短期留学プログラムに参加し、原爆の日に合わせて開かれた現地の平和式典に出席した。

 昨年からはNPO法人PCV(三次市)の一員として、修学旅行や平和学習で平和記念公園を訪れる県内外の中高生たちを月2、3回ほど案内している。「当時も子どもたちが遊んでいたよ」。戦争を経験していない世代が思いを巡らせやすい言葉を選ぶ。「繰り返してはいけない記憶をしっかりと受け継ぎたい」

 作原さんは5年前、盈進高(福山市)の2年生だった。オバマ氏が広島県被団協の坪井直理事長(96)の手を握った光景を鮮明に覚えている。その1週間ほど前に「被爆者団体を率いる坪井氏に会ってほしい」と記した手紙を、在日米大使館に郵送したばかりだったからだ。「願いは形になる」と実感した瞬間だった。

 同校で所属したヒューマンライツ部では、核廃絶を願う署名活動に力を入れた。大学進学後は、原爆被害の記憶を次代に継承する活動に参加。被爆証言の聞き取りやパネル展示会の開催などに携わっている。

 活動の原点として忘れられない出来事がある。オバマ氏訪問の日、核廃絶を説いてきた被爆者岡田恵美子さん(4月に84歳で死去)と話す機会があり、手を握られた。温かかった。「託したよ」。岡田さんの心の声が聞こえたようだった。

 平和関連の事業を担う仕事をしたいと考えている。「多くを学ばせてもらった被爆者の方に恩返しをしたい。核兵器や戦争のない社会を築くため、若い人が行動する機会を、今度は私がつくる」と力を込めた。

(2021年5月28日朝刊掲載)

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