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消えた実験校 教育内容は 広島高等師範学校付属小高等科 広島大文書館、調査を開始

 広島大文書館(東広島市)は、原爆被害と戦後の学制改革を経て廃止になり、関連資料がわずかしか確認できていない「広島高等師範学校付属小高等科」の調査を始めた。2024年の新制広島大発足75年に向けた記念誌編纂(へんさん)事業の一環。このほど卒業生の岡部(旧姓大野)ひさ枝さん(95)=広島市中区=から証言を聞き取った。

 同校は、1905年に付属小と同時に広島市東千田町(現中区)に開校した。小学校を卒業後に学ぶ2年間の課程。「実験校」として、農村地域の小規模教育や先進的な女子教育課程を実践するとともに、軍需産業に貢献する人材育成を目指したとみられる。

 45年8月6日、原爆により千田地区一帯は焼け野原に。47年の廃止までに同校から男女355人が卒業したが消息もほとんどつかめていないという。そんな時、同館の石田雅春准教授が3月の本紙記事「記憶を受け継ぐ」で岡部さんを知った。さっそく本人を訪ね、進学の経緯や学習内容について聞いた。

 岡部さんが在籍した38~40年は女子のみ募集し、旧理学部1号館北側にあった鉄筋の近代的な建物が校舎だったという。「1、2年生10人ずつが同じ教室で学ぶ複式学級だった」「音楽や数学など教科ごとに専門の先生がいた」。岡部さんは、長年手元に置いてきた学芸会や卒業式の写真を見せながら、懐かしそうに振り返った。

 石田准教授は「写真と証言ともに、初めて得た情報ばかり。さらに卒業生や資料を探していく」と話す。岡部さんの証言は記念誌に掲載する。(桑島美帆)

(2021年5月31日朝刊掲載)

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