×

ニュース

国所有1棟も活用を 被服支廠 自民議連要請へ

 自民党の被爆者救済と核兵器廃絶推進議員連盟は1日、広島市南区に残る市内最大級の被爆建物「旧陸軍被服支廠(ししょう)」を巡り広島県が所有の3棟を耐震化する方針を示したことを受け、中国財務局が持つ残る1棟も保存を前提として利活用策を早急に検討するよう、政府に申し入れることを決めた。

 議連の総会を国会内で開き、例年8月6日の広島原爆の日を前に提出している政府への要望書をまとめた。この中で、築108年の被爆建物という歴史的意義に目を向け、国と県が連携して「保存・継承に取り組む」よう求める。

 旧陸軍被服支廠に絡む省庁の役割分担にも着目。財務省の出先機関である中国財務局は国有財産の管理というスタンスなのに対し、厚生労働省は多額の被爆者支援事業費を握り、文化庁も保存関連費の補助が見込める重要文化財指定の権限を持つ。これらを念頭に議連は、利活用の観点から所管を変えるよう要望する。

 会合後、議連の代表世話人を務める寺田稔氏(広島5区)は「県が耐震化を決断したのは好機だ。国は歩調を合わせ、1棟の使い道を固める方向にかじを切ってほしい」と強調した。

 要望書は旧陸軍被服支廠に加え、米国による広島市への原爆投下後に降った「黒い雨」に関し厚労省による援護対象区域(大雨地域)の再検証を急ぐこと▽放射線影響研究所(南区)の移転の早期決着―など全10項目。6月中に政府へ申し入れる予定だ。(樋口浩二)

(2021年6月2日朝刊掲載)

年別アーカイブ