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被爆者医療 将来展望は 研究者講演 手法や若手育成に課題

 被爆者医療などについて研究者が講演する「原子爆弾後障害研究会」が6日、オンラインで開催された。広島原爆障害対策協議会が企画し61回目。大学教員たち4人が将来展望を語った。

 放射線影響研究所(広島市南区)の野田朝男・分子生物科学部長は、被爆者の血液など保存試料をゲノム(全遺伝情報)解析し、遺伝による影響を解明するため「国際共同研究の枠組みを作ろうとしている」と明かした。ただ、試料提供時に研究所外への持ち出しなどの同意を得ておらず、既に亡くなった人も多いと説明。「進めるには被爆者や被爆2世、市民の理解が必要になる」と語った。

 長崎大原爆後障害医療研究所(長崎市)の光武範吏教授も「DNAは個人情報。研究手法の議論を進めないといけない」と指摘した。

 若手育成を求める声も上がった。広島大原爆放射線医科学研究所(同区)の広橋伸之教授は「(原発事故を含む)放射線災害医療に携わる人材が高齢化している」と危機感を示した。

 広島大の鎌田七男名誉教授も特別講演で参加。被爆者人口が広島では2040年ごろ、長崎では35年ごろに、それぞれ千人規模まで減るとの予測を示し「次代の研究者の育成が課題だ」と述べた。(長久豪佑)

(2021年6月7日朝刊掲載)

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