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塔時計100年 現役時を模型に 旧呉海軍工廠 広島工大生が制作 「見つめ直すきっかけに」

 呉市幸町の入船山記念館にある旧呉海軍工廠(こうしょう)塔時計が6月で誕生から100年を迎えたのを受け、広島工業大(広島市佐伯区)の学生たちが、工廠で現役だった当時の模型を制作した。保存活動に取り組む呉東ロータリークラブ(RC)から依頼を受け、建造の背景など研究を深めながら取り組んだ。(池本泰尚)

 塔時計は1921年6月、呉市昭和町に同工廠の造機部庁舎が完成したのと同時期に、屋上に設置された。東西南北4面を向いて時計が付けられ、工廠で働く人たちに広く時刻を知らせていた。終戦後、施設の民間移管を経て71年に記念館に寄贈された。故障していたが設計士たち有志が修理し、81年から動き始めたという。

 造機部庁舎は鉄筋コンクリート3階建てで、今もIHI呉総合事務所として使われている。学生たちは、巨大工場の時を刻んでいた姿をイメージしてほしいと、屋上にあった当時の姿を建物と共に模型で再現することにした。同社を見学し、残っていた図面を借りるなどして設計した。

 建物全体を再現した100分の1サイズと、屋根部分に絞った25分の1サイズの2種類。屋根の骨組みをつなぐ部品や、窓の模様など細部にこだわった。時計部分は交流のある呉高専(呉市)が協力し、3Dプリンターで造形。25分の1サイズのものは実際に動くという。

 今後、新型コロナウイルスの感染状況を見てお披露目式を開き、記念館内に飾られる予定。同大大学院1年の木戸勇之介さん(22)は「建物は製図室が3階にあり、採光のため上階ほど階高が大きいなど、工夫されている。呉では当たり前のように存在している貴重な建物を、見つめ直すきっかけになればうれしい」と話した。

(2021年6月17日朝刊掲載)

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