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原爆慰霊碑など張り紙 公園内4カ所 広島中央署が捜査

 24日午後1時ごろ、広島市中区の平和記念公園内にある原爆慰霊碑に粘着テープで紙が1枚張られているのを通行人が見つけ、警備員を通じて市に連絡した。公園内では原爆ドームの説明版など計4カ所で同様に張り紙などが見つかった。市は被害届を出す方針で、広島中央署は軽犯罪法違反容疑を視野に捜査を始めた。

 市平和推進課と同署によると、原爆慰霊碑の張り紙はA4判ほどの大きさで、数字や片仮名など意味不明の文言が書かれていた。「安らかに眠って下さい 過ちは繰返しませぬから」という碑文全体を覆い隠すように粘着テープも張られていた。

 市が慰霊碑を捉えたカメラの映像を確認したところ、午後1時ごろ、紙を張る人物1人が写っていた。警備員が同0時50分ごろに巡回した際は異常がなかったという。

 このほか原爆ドーム近くにあるドームの説明版と原爆被災説明板にも同様に紙が張られ、「平和の池」の銘板には粘着テープだけが張られているのが見つかった。

相次ぐ悪質行為 憤り

 平和への思いがまた傷つけられた。24日、原爆慰霊碑などへの張り紙が相次ぎ見つかった平和記念公園(広島市中区)。一帯では過去にもペンキが塗られたり、落書きされたりする事件が繰り返されている。被爆者たちは悲しみや憤りをあらわにした。

 「何ということをしてくれたのか」。原爆で母を亡くし、毎日参拝に訪れる村上将昭さん(77)=西区=は慰霊碑前で目を潤ませた。母や祖母を亡くした尾川進さん(81)=中区=は「またこんなことが起きたのか」と残念がった。

 公園一帯では近年も心ない行為が繰り返されている。2018年10月にはブルガリア国籍の男2人が原爆ドームそばのベンチなど5カ所にスプレーで落書きし、その後に書類送検された。19年5月には平和大橋の欄干に落書きしたとして少年が摘発された。

 市は防犯体制を強化してきた。24時間稼働する複数の防犯カメラを配備するほか、人の侵入を感知するセンサーを原爆ドーム周辺などに設置。夜間も警備員が定期的に巡回している。これまでの事件で、防犯カメラ映像が容疑者特定に貢献している。

 ただ、今回のような行為を未然に防ぐのは現実的に難しい。市平和推進課は「世界の平和を求める人々の心を思えば、強い憤りを覚える。二度と行わないでほしい」と求めた。(松本輝、坂本顕)

<平和記念公園一帯での主な器物損壊事件など>

1965年2月 原爆慰霊碑の碑文に赤い泥絵の具
  76年8月 原爆慰霊碑の碑文の下に「トルーマン大統領」と彫った石板が張り付けられる
  84年3月 動員学徒慰霊塔の千羽鶴約10万羽が燃やされる
  99年10月 「韓国人原爆犠牲者慰霊碑」の台座にペンキ
2001年12月 原爆ドーム外壁に落書き
  02年2月 「原爆の子の像」前の折り鶴約5万羽が焼失
  05年7月 政治結社構成員が原爆慰霊碑の碑文を削る
  06年1月 平和の灯などに塗料で落書き
  10年3月 被爆桜の苗木が盗まれる
  12年1月 原爆慰霊碑の碑文に金色の塗料が吹き付けられる
     9月 原爆慰霊碑の碑文に赤のスプレーで落書き
  18年10月 原爆ドームそばのベンチなど公園内5カ所に落書き
  19年3月 原爆ドームそばの慰霊碑にふんが塗りつけられる
     5月 平和大橋の欄干に落書き

(2021年6月25日朝刊掲載)

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