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[ヒロシマの空白] 掘り出された軍都の跡 サカスタ用地 被爆の軍遺構公開

 広島市は25日、中区の中央公園広場で見つかった旧陸軍の輸送部隊「中国軍管区輜重(しちょう)兵補充隊(輜重隊)」施設の被爆遺構を報道機関に公開した。サッカースタジアム建設予定地で、市内の被爆遺構の発掘例としては過去最大級。米軍の原爆投下によって壊滅した厩舎(きゅうしゃ)や兵舎などの施設跡が出土している。

 公開したのは、調査エリア約1万4千平方メートルのうち現在調査をしている約6千平方メートル。大半で地下1メートル余りから輜重隊の遺構が出土している。一部は江戸期まで掘り進めた。

 この日は、市の委託で発掘調査をしている市文化財団などの担当者が、遺構を報道陣に解説。戦地で軍需品を運ぶ軍馬を飼っていた厩舎4棟の石やアスファルトでできた基礎のほか、兵舎や馬の水飲み場などの跡を確認したとした。馬の骨や蹄鉄(ていてつ)、旧陸軍の銃弾なども見つかっている。

 市文化振興課は「軍施設が意外に良好な形で残っていた。戦前の広島が軍都だったことを伝える資料になる」と説明。7月に遺構の撤去を始める予定だが、一部を切り取って別の場所で保存することを検討するという。

 市は昨年、サッカースタジアムの建設工事で遺構が失われる前に記録を残そうと発掘調査を始めた。来年3月までの予定。市民対象の現地説明会は実施せず、写真を使った報告会をことし7月下旬に市施設で開くという。(水川恭輔)

中国軍管区輜重兵補充隊
 馬や自動車で、武器弾薬や食糧の運搬を担う部隊で、隊員はここで訓練後に戦地に赴いた。広島城西側に輜重兵第五小隊として1880年に発足。その後に拡張や改称をした。「広島輜重兵隊史」(1973年刊)は、原爆の被爆死・行方不明者は計423人、負傷者は計343人に上ったとしている。

(2021年6月26日朝刊掲載)

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