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平和条例案が可決 広島市議会 「式典厳粛に」残る

 広島市議会(定数54)は25日、本会議を開き、議員提案した平和推進基本条例案を賛成多数で可決した。前文と全10条からなり、平和の推進に関する市の責務や市議会と市民の役割などを定めている。言論規制につながる恐れがあるなどとして市民団体や被爆者団体が懸念を示していた、平和記念式典を「厳粛の中で行う」との表現は残した。近く施行される。(余村泰樹、新山創)

 理念を示す前文には、核兵器禁止条約の1月の発効を盛り込んだ。第2条は、平和について「世界中の核兵器が廃絶され、戦争その他の武力紛争がない状態」と定義。第5条は、市民の役割として「平和の推進に関する活動を行うよう努めるものとする」と掲げた。

 第6条2項は「市は、平和記念式典を、市民等の理解と協力の下に、厳粛の中で行うものとする」と記した。二つの広島県被団協や広島弁護士会などが「十分議論されていない」「市民の行動を制約すると受け止められる」などとして、提案の見送りや修正を要望したが、実現しなかった。

 条例は、全9会派の代表者でつくる政策立案検討会議が2019年7月に検討を開始。議論や市民意見の公募を経て条例案をまとめ、今月8日に山田春男議長へ報告した。山田議長と渡辺好造副議長は21日、各会派の幹事長会議で修正案を提示。共産党を除く8会派の所属市議が修正案に賛同し、議員提案した。

 採決では、山田議長と欠席1人を除く52人のうち8割の42人が賛成した。反対は9人で、共産党5人、市民連合2人、自民党保守クラブ1人、市政改革ネットワーク1人。市政改革ネットの1人は退席していた。

 条例の成立を受けて、松井一実市長は「被爆体験の風化と平和意識の希薄化が危惧される中、将来にわたり取り組むべき市の使命が明文化されたことは意義がある」とコメントした。

(2021年6月26日朝刊掲載)

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