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[ヒロシマの空白] 巨大施設 戦時下の証人 戦争・被爆の悲劇刻む

サカスタ用地 被爆軍遺構公開

 25日、報道機関に公開された中央公園広場(広島市中区)のサッカースタジアム建設予定地の発掘現場。見つかった旧陸軍の輸送部隊「中国軍管区輜重(しちょう)兵補充隊(輜重隊)」の被爆遺構には広島が明治期から「軍都」として近代化した歴史と、戦争・被爆の悲惨な記憶が刻まれている。(水川恭輔)

 発掘現場の東側エリアでは、隊員が暮らしていた兵舎や便所の跡、飛び降りる訓練に使っていたとみられるコンクリートの階段の遺構などが見つかった。戦時中、常時約千人が配属されていたとされる巨大軍事施設の日常の一端がうかがえる。

 施設は爆心地から1キロ以内に広がっていたため、原爆投下で壊滅。被爆後の写真を見ると、焼け跡には、炊事浴場付近にあった煙突がかろうじて残っていた。今回、西側の発掘エリアでは同じ煙突の跡とみられる遺構も確認され、写真と遺構を結びつけることで一帯の被爆時の状況を効果的に伝えることもできそうだ。

 貴重な遺構だけに、市民対象の現地説明会を求める声も相次ぎ上がっている。報道公開をフェンス越しに見守った広島県原水禁の金子哲夫代表委員(72)は「市民対象に早急に開いてほしい」とあらためて市に求めた。

(2021年6月26日朝刊掲載)

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