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社説・コラム

[核禁条約 私の国では] ノルウェー アカリ・イズミ・クヴァメさん

都市や政党 広がる賛同

 ノルウェーは2013年に第1回の「核兵器の非人道性に関する国際会議」を首都オスロで開き、核兵器禁止条約の実現へ大きな流れをつくった。「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN(アイキャン))が17年に受けたノーベル平和賞授賞式の会場でもある。

 しかし現政権は条約に後ろ向きで、北大西洋条約機構(NATO)の加盟国として「条約と核抑止力維持の両立は困難」という見解を固持している。来年に予定される条約の第1回締約国会議にオブザーバー参加するよう迫っているが平行線のままだ。

 そんな中、自治体レベルの動きは活発になっている。19年5月にオスロ市が条約支持を表明。ほかの都市の賛同も増えている。国政レベルでは、9月の総選挙を前に「ICANノルウェー」が各党議員と個別に面会し、働き掛けた。すると新たに2政党が条約支持を表明した。手応えを感じている。

 ICANノルウェーは国内の50団体で構成し、私はその一つ「核兵器ノー」の運営責任者だ。会員は約2千人。最近は若者向け雑誌を発行し、教育プログラムを実践している。核兵器の脅威が自国の問題であると認識し、活動に加わる若者を増やしている。

 昨年8月6日には「ネバー・アゲイン・ヒロシマ」と名付けてイベントを開催した。野外コンサートの予定が、新型コロナウイルス禍を受け変更。国営放送がライブ中継した。日本被団協の藤森俊希事務局次長の招待も断念し、代わりにビデオメッセージを流した。

 母は日本人で、母方の家族は札幌市に住む。2年前、日本原水協などの原水爆禁止世界大会に参加するため広島と長崎を初めて訪れた。原爆資料館で街の壊滅ぶりを痛感し、被爆者の声を聞いた。あのような被害をもたらす核兵器がなおも必要だとする考えは、受け入れられない。被爆者や日本の若い人と核兵器廃絶に向けて前進したい。(新山京子)

(2021年6月28日朝刊掲載)

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