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原爆症基準早期改定を 被団協など要望 厚労相「難しい」

 原爆症の認定基準を巡り日本被団協など3団体は30日、厚生労働省との定期協議に臨んだ。現行の基準で認定対象外となった被爆者が起こした裁判で勝訴が相次いでいるとして、基準の早期見直しを求めた。田村憲久厚労相は新たな科学的知見が必要だと主張し、「難しい」と繰り返した。  被団協と原爆症認定集団訴訟全国原告団、同訴訟全国弁護団連絡会の代表ら10人が出席。ビデオ会議システムで全国の被爆者約60人も見守る中、各地の認定訴訟で勝訴率が約8割に上ることを挙げ、「行政と司法の判断の乖離(かいり)は明らかだ」と訴えた。

 その上で、狭心症▽甲状腺機能亢進症(こうしんしょう)▽脳梗塞―の三つの病気を積極認定の対象に加えることなどを改めて要望。7歳の時に広島市で被爆した被団協の児玉三智子事務局次長(83)=千葉県市川市=は「被爆者は少なくなっている。本当に時間がない」と強調した。

 これに対し、田村厚労相は新たな科学的知見がなければ「認定基準を変えるのは難しい」と述べ、後ろ向きな姿勢に終始した。

 会合後に記者会見した被団協の田中熙巳代表委員(89)は「改定協議は終わりにしたいのが本音だ。科学的知見に固執する行政に怒りを感じる」と話した。

 定期協議は2009年、原爆症認定に関し被団協と政府が交わした「訴訟の場で争う必要のないよう、定期協議の場を通じて解決を図る」との確認書に基づいて始まった。昨年は新型コロナウイルスの影響で見送られ、19年12月以来の開催となった。(樋口浩二)

(2021年7月1日朝刊掲載)

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