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被爆証言「あの日」描く 基町高小林さん 箕牧さんに絵を披露

 被爆76年を前に、広島市中区の基町高3年小林南々帆さん(19)=南区=が、被爆者の箕牧(みまき)智之さん(79)=北広島町=の「あの日」を描いた絵を完成させた。被爆者が高齢化する中、原爆の実態を伝え続けたいとの思いを絵筆に込めた。

 縦45・5センチ、横53・0センチのアクリル画。自宅から約150メートル離れた場所にあった安芸飯室駅(安佐北区)で、父の帰宅を待つ3歳の箕牧さんを描いた。日が傾いて人通りが少なくなる中、どれだけ待っても父の姿を見つけることができない幼子の心細さを、濃い陰影などで描き上げた。

 2018~19年にも箕牧さんの被爆体験を描いた小林さん。19年夏から留学した米国では原爆を正当化する意見に触れ、「日常を奪われた人々がいる事実を伝えたい」との思いを強めた。それを形にしようと、20年春の帰国後に箕牧さんへ連絡し、今年2月ごろから制作を進めていた。

 箕牧さんは県被団協(坪井直理事長)で理事長代行を務める。小林さんと6月30日に基町高で会い、絵を披露してもらった。「よく描けている。国際会議に赴く際に、写真などで持って行きたい」と喜んだ。

 小林さんは「幼かった箕牧さんの心境に思いをはせると苦しくなることもあった。私にとってコミュニケーションの手段である絵を通じて、原爆の実態をより多くの人に伝えたい」と誓った。(小林可奈)

(2021年7月2日朝刊掲載)

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