×

ニュース

8・6気象再現 精度に疑義 「黒い雨」再検証会合

 米国による広島市への原爆投下後に降った「黒い雨」の被害を巡り、厚生労働省は2日、援護対象区域(大雨地域)を再検証する第4回の有識者会合を東京都内で開いた。被爆直後の気象状況を再現するシミュレーションを本年度内に行い、降雨エリアの推定図を作る計画に対し、精度を疑問視する声が上がった。

 会合はビデオ会議システムも用い、佐々木康人座長ら委員11人が意見を交わした。気象再現シミュレーションの進め方を説明したのは、京都大複合原子力科学研究所の五十嵐康人教授。広島大と長崎大とともに1945年8月6日の天気図などをよりどころに、コンピューター分析を駆使する計画で「完全に再現できるとは思わないが、できる範囲で努力する」と話した。

 これに対し、シミュレーションで肝となる膨大なデータ設定の難しさを指摘する声が出た。岩崎俊樹・東北大特任教授は「求める答えが出ない可能性が高い」と述べ、増田善信・元気象研究所研究室長は「科学者の倫理性が問われる」と計画中止を唱えた。佐々木座長は「さらに議論する必要がある」とし、次回会合への持ち越しを決めた。

 一方で、広島市の小池信之副市長は厚労省のスピード感に疑いを向け「黒い雨の被害者が待っている。できるだけ早く降雨地域を広げる結論を出してほしい」と要望。厚労省側は「なるべく迅速に検証を進める」と述べるにとどめた。(樋口浩二)

(2021年7月3日朝刊掲載)

年別アーカイブ