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締約国会議 政府参加を 核兵器禁止条約の議論促す 広島市の平和宣言案

 広島市の松井一実市長が今年の原爆の日の平和記念式典で読む平和宣言で、日本政府に対し、核兵器禁止条約の締約国会議への参加を求める方針であることが8日、分かった。核兵器廃絶へ向けて禁止条約の実効性を高めるための議論へ参画するよう促す。(水川恭輔、明知隼二)

 米国の「核の傘」に依存する日本政府は、禁止条約の署名、批准に背を向けている。一方で締約国会議はオブザーバーの参加を認めている。禁止条約の今年1月の発効を受けた第1回会合は来年1月、オーストリアの首都ウィーンで開催を予定しており、被爆国である日本政府の参加に期待する声が国内外で出ている。

 複数の関係者によると、松井市長は平和宣言で日本政府に対し、条約加盟前でも締約国会議に参加し、議論に加わるよう求める。日本政府が掲げている、禁止条約に反発する核保有国と推進する非保有国との「橋渡し」役を担うためにも重要との考えからという。

 オブザーバー参加について、日本政府は慎重に見極めるとする。松井市長が会長を務める平和首長会議は参加する方向で検討しており、松井市長は現地を訪れ、市長と会長の双方の立場で核兵器廃絶を訴えることに意欲を示している。

 平和宣言ではほかに、日本政府が禁止条約に署名、批准するよう、昨年に続いて求める。核抑止力による安全保障政策からの転換を核保有国の為政者に促すため、世界中の市民が平和の思いを共有する平和文化を広める必要性を訴える。

 この日、市役所で宣言について有識者や被爆者の意見を聞く懇談会があり、松井市長が非公開で示した文案がおおむね了承された。松井市長は終了後、禁止条約に関わる具体的な文言について後日、明らかにするとした。宣言は松井市長が8月6日までに起草する。

(2021年7月9日朝刊掲載)

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