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保存・活用へ外部意見を 被爆遺構で6団体 広島市は消極姿勢

 サッカースタジアム建設予定地の中央公園広場(広島市中区)の発掘調査で見つかった旧陸軍の輸送部隊「中国軍管区輜重(しちょう)兵補充隊」施設の被爆遺構で、広島の被爆者6団体は9日、遺構の保存・活用へ外部有識者の意見を聞くよう市に求めた。市は現場の専門職員の意見に基づき作業を進めるとし、実物の保存には消極的な姿勢を示した。

 二つの広島県被団協など6団体の代表たち4人が市役所で、4項目の要望書を杉山朗市民局長に渡した。遺構の保存・活用方針で軍事遺跡や都市計画の専門家の意見を反映し、遺構の評価が定まるまでは現状変更しないことなどを求めた。

 杉山局長は、今回の発掘を担った専門職員は、原爆資料館(中区)本館下で2015~17年にした発掘調査にも携わったなどと説明。「市では被爆遺構に誰よりも詳しい。その意見を踏まえて粛々と進める」として、外部有識者の声を聞く予定はないとした。

 実物保存では、県被団協(坪井直理事長)の箕牧(みまき)智之理事長代行(79)が「原爆遺構は世界でも広島と長崎にしかない」と訴えた。

 杉山局長は「戦後は生活の場となったため状態が良くなく、歴史的な価値は低い。被爆の痕跡が明らかなら現物保存を考えるが、現時点ではそういうものはない」との見解を表明。写真や測量データなどを詳しく残す記録保存を軸とする考えを示した。

 終了後、もう一つの県被団協の佐久間邦彦理事長(76)は「軍施設がそこにあり、被爆したという事実が重要。痕跡が明らかでなくても残すべきではないか」と話した。(明知隼二)

(2021年7月10日朝刊掲載)

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