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政府の署名目指し協力 核禁条約 被爆者団体に広島市長ら

 広島市の松井一実市長と広島県の湯崎英彦知事は12日、日本政府に核兵器禁止条約への署名・批准を求める広島の被爆者7団体の署名活動に応じた。禁止条約への批准を「被爆国の責務」とする被爆者たちの訴えに、被爆地の首長として名を連ねた。

 松井市長は7団体のうち6団体の代表たち6人の訪問を受けて、市役所で応じた。「市民社会の総意として核抑止の考えを放棄してほしい。政府にも批准をお願いしたい」と述べた。

 県被団協の佐久間邦彦理事長(76)は「禁止条約は核兵器廃絶への本当の第一歩。市長からも政府に批准を強く訴えてほしい」と説いた。もう一つの県被団協(坪井直理事長)の箕牧(みまき)智之理事長代行(79)は「禁止条約の批准こそ、核兵器保有国と非保有国の橋渡しになるはずだ」と訴えた。

 湯崎知事は県庁を訪れた一行に署名を渡した。

 7団体は県と市を除く県内22市町長には郵送で署名を依頼しており、うち11人から署名を受け取ったという。日本被団協が11月に集約し、政府に提出する計画でいる。(明知隼二)

「政府思考停止」と苦言 広島知事

 広島県の湯崎英彦知事は12日、核兵器禁止条約に背を向け続ける日本政府に対し「思考停止しているようなところがある」と苦言を呈した。広島の被爆者7団体の署名活動に応じた後、記者団の取材で述べた。

 湯崎知事は、核兵器保有国と非保有国の「橋渡し」を唱える日本政府が、現状では具体策を打ち出せていないとの認識を示した。

 その上で、2019年に報告書をまとめた外務省の賢人会議に触れ「結果がどう政府のアクションにつながっているのかが見えない」と指摘。禁止条約の締結に向けた被爆者の願いや国際社会の潮流を踏まえた対応を日本政府に迫った。

 併せて、核兵器の廃絶には核抑止からの脱却が必要だと強調した。核兵器がもたらす被害の現実に目を向けて、新しい安全保障の在り方を追求すべきだと訴えた。(宮野史康)

核禁条約署名 政府に要望へ 広島市

 政府の2022年度予算編成で、広島市は12日、今年1月に発効した核兵器禁止条約への署名・批准や、大型事業への財源確保など31項目を要望すると明らかにした。市議会の大都市税財政・地方創生対策特別委員会で説明した。

 重点要望は5項目。禁止条約では締約国となり、核兵器の保有国と非保有国の橋渡し役として積極的な外交をするよう提案する。原爆投下後に降った「黒い雨」の降雨地域の拡大実現では被爆者の立場に立った政治判断をすることや、被爆建物と被爆樹木の保存への補助拡充なども訴える。

 大型事業は、サッカースタジアム(中区)の建設やJR広島駅南口(南区)の再整備などを掲げている。

 新型コロナウイルスの影響で、今年の要望方法は検討中とした。例年は松井一実市長たちが上京し、各省庁の幹部や広島県選出の国会議員に説明している。

(2021年7月13日朝刊掲載)

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