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被爆遺構の一部保存へ サカスタ予定地 広島市長が検討

 広島市のサッカースタジアム建設予定地の中央公園広場(中区)で見つかった旧陸軍の輸送部隊「中国軍管区輜重(しちょう)兵補充隊(輜重隊)」施設の被爆遺構で、松井一実市長は13日、一部を切り取って保存活用する方向で検討する考えを示した。移設場所は中央公園内を含めて探るとした。

 松井市長は記者会見で、出土した遺構について「戦前の広島を想起させる一助になるのは間違いない」と評価した。その上で「戦前の広島の姿の一端を知ってもらうため、切り取った遺構の一部を何らかの形で保存活用する方向で検討できればいいと考えている」と強調した。

 移設先は「遠くない場所、中央公園の中でどこかないかを検討の対象としたい」と説明。現地保存については「遺構をスタジアムに取り込むのは困難」と述べ、消極的な姿勢を示した。遺構の現状は「軍施設の上に応急住宅を建設したことなどで、状況は良好ではない」と指摘した。

 輜重隊は馬や自動車を使い、戦地で武器弾薬や食糧の運搬を担う部隊。米軍の原爆投下で400人以上が犠牲になったとされる。発掘調査はスタジアム建設予定地の中央公園広場西側部分で昨年から始まり、軍馬の厩舎(きゅうしゃ)や水飲み場などの跡が出ている。(水川恭輔)

(2021年7月14日朝刊掲載)

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