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「黒い雨」二審も原告勝訴【解説】幅広い救済迫る判決

 原爆投下直後の広島で降った「黒い雨」を巡る14日の広島高裁判決は、被害救済を前面に、国の被爆者援護行政の見直しを強く迫った。原告全員を被爆者と認めた一審広島地裁判決からさらに踏み込み、黒い雨を浴びるなどしたものの、特定11疾病を発症していない人も被爆者と認めるという新たな枠組みを示した。

 国は黒い雨に遭った人を被爆者と認定する場合、①援護対象区域内で雨に遭う②がんや白内障など特定11疾病を発症―の2点を満たすことを要件としている。

 しかし、高裁判決は、井戸水を飲むなどして内部被曝による健康被害を受ける可能性があったと指摘。区域の内外や11疾病の発症は問わず、被曝した可能性があれば積極的に認定するよう求めた。

 被爆地の思いに寄り添うとともに、国が主張し続けてきた「科学的知見」の限界を指摘した格好だ。判決で言及されたように、最新の知見は、新たに被爆者を認定する方向で用いられるべきだろう。

 国が一審判決後に設置した有識者の検討会は区域拡大の是非が主な議題だが、原告が望むスピードで議論が進んでいるか。国は早急に結論を出すとともに、認定行政の在り方も再検討する必要があるだろう。

 苦しみや怒りの声を上げられず、老いを深める黒い雨被害者は原告以外にも多い。時間は残されていない。幅広い救済に向け、政治決着を決断すべき時期に来ている。(松本輝)

(2021年7月15日朝刊掲載)

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