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「黒い雨」訴訟 高裁判決要旨

 広島への原爆投下直後に降った「黒い雨」訴訟で住民84人全員を被爆者と認定し、被爆者健康手帳の交付を命じた一審判決を支持し、広島県や広島市、国側の控訴を棄却した14日の広島高裁判決の要旨は次の通り。

  【被爆者認定】
 被爆者援護法による被爆者の認定要件のうち「身体に原子爆弾の放射能の影響を受けるような事情の下にあった者」の意義は「原爆の放射能により健康被害が生ずる可能性がある事情の下に置かれていた者」と解するのが妥当だ。該当すると認められるためには「原爆の放射能により健康被害が生ずることを否定することができないものであったこと」を立証すれば足りると解される。

 被爆者援護法は、原爆による健康被害が他の戦争被害と異なる特殊なものであることに鑑みて制定されたことから、戦争遂行主体の国が自らの責任で救済を図る一面もあり、国家補償的配慮が制度の根底にある。

  【黒い雨の被害】
 黒い雨に放射性降下物が含まれていた可能性があったことから、黒い雨に直接打たれた者は無論のこと、たとえ打たれていなくても、空気中の放射性微粒子を吸引したり、地上に到達した放射性微粒子が混入した飲料水、井戸水を飲んだり、付着した野菜を摂取したりして、放射性微粒子を体内に取り込むことで内部被曝(ひばく)による健康被害を受ける可能性がある。

 黒い雨に遭った者は「原爆の放射能により健康被害が生ずることを否定することができないものであったこと」が認められ、被爆者援護法による被爆者の認定要件に該当する。

  【原告の状況】
 国が援護の対象とする特例区域を含め、それぞれの調査に基づき範囲が異なる三つの降雨域は、黒い雨が降った蓋然(がいぜん)性が高いということができる。範囲外だからといって黒い雨が降らなかったとするのは相当ではない。実際には特例区域よりも広範囲に黒い雨は降ったと推認される。

 原告らは少なくとも原爆投下後、黒い雨降雨域の各地に雨が降り始めてから降りやむまでのいずれかの時点で、黒い雨降雨域に所在していたと認められるから、黒い雨に遭ったと認められる。

  【結論】
 原告らは被爆者に該当することから、広島市、広島県が被爆者健康手帳の申請を却下したのは違法で、却下処分は取り消しを免れない。市、県に対し手帳交付を義務づけるのが相当だ。

(2021年7月15日朝刊掲載)

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