『核兵器はなくせる』 NPT準備委 前半終え議題合意
09年5月14日
■ヒロシマ平和メディアセンター編集部長 江種則貴(ニューヨーク発)
国連本部で開かれている核拡散防止条約(NPT)再検討会議第三回準備委員会は11日午前から、2週間の会期の後半に入る。すでに2010年の再検討会議の議題(アジェンダ)で各加盟国が合意するなど、意見交換は順調に進んでいる。核軍縮をめぐる各国の主張を含め、前半の議論を整理してみた。
合意に達した来年の議題は計20項目。開会宣言などの項目を列挙した式次第であり、具体的な内容はない。また、前々回(2000年)の再検討会議の議題とほぼ同じで、核兵器廃絶の「明確な約束」を含む13項目から成る2000年の最終文書を考慮する、との文言を付け加えただけにとどまっている。
しかし、前回(2005年)の再検討会議が議題をめぐる議論で4週間の会期の半分以上を費やしたことを考えると、準備委段階ですんなり合意したことは、来年に向け「明るい展望」との見方が広がっている。
また準備委は、来年の再検討会議の日程を当初予定より1週間ずらし「5月3日からの4週間」と決めた。国連本部ビルの改修のためという。
準備委のボニフェース・シディアスシク議長(ジンバブエ国連大使)は8日、来年の再検討会議への「勧告」草案を各加盟国に提示した。議題の決定と並ぶ今回の準備委の最大の目標がこの勧告の決定。草案をめぐるやりとりが準備委後半の焦点となりそうだ。
議長が示した草案は計8項目。各国の主張を基に、核軍縮・不拡散の現状認識と将来課題を盛り込んだ。
たとえば第2項「核軍縮を達成する行動計画」では、2000年の最終文書の13項目が遂行されていないとの認識を踏まえ、核兵器廃絶に向けた行動計画の採用を考慮するよう来年の再検討会議に注文。包括的核実験禁止条約(CTBT)の発効▽検証可能な核弾頭の削減▽軍縮の透明性拡大-などの文言も盛り込んでいる。
このほか「核兵器国が非核兵器国に対し、核兵器の使用や威嚇をしないとの保障の重要性を確認する」「非核兵器地帯は核不拡散にとって重要な貢献であり、これを支援する」などの表現もある。
各加盟国の冒頭スピーチや準備委に提出した作業文書では、2000年の最終文書の13項目への言及が目立つ。多くの非核兵器国は核兵器国に完全な履行を求め、米国が冒頭演説で「2000年の決定の重要性を再認識する」と表現したことを歓迎している。非同盟諸国を代表して演説したキューバは、これらの目標の達成時期を設定するよう求めた。
核兵器国ではこのほか、ロシアが米国の地球規模でのミサイル防衛(MD)について、名指しは避けつつ「一方的に続ける限り核軍縮の進展はない」と批判した。軍拡を進めていると他国から批判を浴びる中国は、核兵器の先制不使用や非核兵器国を攻撃しないことなど従来の政策をあらためて訴えている。
また国際会議の開催提案も目立つ。日本は来年の再検討会議を前に「核軍縮会議」を主催すると表明。モンゴルも同じ時期に非核兵器地帯国際会議開催の意向を示した。一方、ベトナムは第四回国連軍縮特別総会を開くよう求めている。
≪2000年の再検討会議で合意した13項目≫
①包括的核実験禁止条約(CTBT)の早期発効
②核実験のモラトリアム
③兵器用核分裂物質生産禁止条約(カットオフ条約=FMCT)の即時交渉開始
④ジュネーブ軍縮会議に核軍縮を扱う補助機関の即時設置
⑤核兵器などの軍備管理・削減に「不可逆性の原則」を適用
⑥核兵器全面廃絶への明確な約束
⑦戦略核兵器削減条約プロセスの促進、弾道弾迎撃ミサイル(ABM)制限条約の維持・強化
⑧国際原子力機関(IAEA)、米国、ロシアの三者協定の妥結・実施
⑨核兵器国の核軍縮措置(一方的核削減へのさらなる努力、非戦略核の削減など)
⑩余剰核分裂性物質の国際管理と処分
⑪究極的目標としての全面かつ完全軍縮
⑫核軍縮努力義務についての定期報告
⑬核軍縮のための検証能力の向上
(2009年5月12日朝刊掲載)
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国連本部で開かれている核拡散防止条約(NPT)再検討会議第三回準備委員会は11日午前から、2週間の会期の後半に入る。すでに2010年の再検討会議の議題(アジェンダ)で各加盟国が合意するなど、意見交換は順調に進んでいる。核軍縮をめぐる各国の主張を含め、前半の議論を整理してみた。
アジェンダ
合意に達した来年の議題は計20項目。開会宣言などの項目を列挙した式次第であり、具体的な内容はない。また、前々回(2000年)の再検討会議の議題とほぼ同じで、核兵器廃絶の「明確な約束」を含む13項目から成る2000年の最終文書を考慮する、との文言を付け加えただけにとどまっている。
しかし、前回(2005年)の再検討会議が議題をめぐる議論で4週間の会期の半分以上を費やしたことを考えると、準備委段階ですんなり合意したことは、来年に向け「明るい展望」との見方が広がっている。
また準備委は、来年の再検討会議の日程を当初予定より1週間ずらし「5月3日からの4週間」と決めた。国連本部ビルの改修のためという。
勧告
準備委のボニフェース・シディアスシク議長(ジンバブエ国連大使)は8日、来年の再検討会議への「勧告」草案を各加盟国に提示した。議題の決定と並ぶ今回の準備委の最大の目標がこの勧告の決定。草案をめぐるやりとりが準備委後半の焦点となりそうだ。
議長が示した草案は計8項目。各国の主張を基に、核軍縮・不拡散の現状認識と将来課題を盛り込んだ。
たとえば第2項「核軍縮を達成する行動計画」では、2000年の最終文書の13項目が遂行されていないとの認識を踏まえ、核兵器廃絶に向けた行動計画の採用を考慮するよう来年の再検討会議に注文。包括的核実験禁止条約(CTBT)の発効▽検証可能な核弾頭の削減▽軍縮の透明性拡大-などの文言も盛り込んでいる。
このほか「核兵器国が非核兵器国に対し、核兵器の使用や威嚇をしないとの保障の重要性を確認する」「非核兵器地帯は核不拡散にとって重要な貢献であり、これを支援する」などの表現もある。
各国の主張
各加盟国の冒頭スピーチや準備委に提出した作業文書では、2000年の最終文書の13項目への言及が目立つ。多くの非核兵器国は核兵器国に完全な履行を求め、米国が冒頭演説で「2000年の決定の重要性を再認識する」と表現したことを歓迎している。非同盟諸国を代表して演説したキューバは、これらの目標の達成時期を設定するよう求めた。
核兵器国ではこのほか、ロシアが米国の地球規模でのミサイル防衛(MD)について、名指しは避けつつ「一方的に続ける限り核軍縮の進展はない」と批判した。軍拡を進めていると他国から批判を浴びる中国は、核兵器の先制不使用や非核兵器国を攻撃しないことなど従来の政策をあらためて訴えている。
また国際会議の開催提案も目立つ。日本は来年の再検討会議を前に「核軍縮会議」を主催すると表明。モンゴルも同じ時期に非核兵器地帯国際会議開催の意向を示した。一方、ベトナムは第四回国連軍縮特別総会を開くよう求めている。
≪2000年の再検討会議で合意した13項目≫
①包括的核実験禁止条約(CTBT)の早期発効
②核実験のモラトリアム
③兵器用核分裂物質生産禁止条約(カットオフ条約=FMCT)の即時交渉開始
④ジュネーブ軍縮会議に核軍縮を扱う補助機関の即時設置
⑤核兵器などの軍備管理・削減に「不可逆性の原則」を適用
⑥核兵器全面廃絶への明確な約束
⑦戦略核兵器削減条約プロセスの促進、弾道弾迎撃ミサイル(ABM)制限条約の維持・強化
⑧国際原子力機関(IAEA)、米国、ロシアの三者協定の妥結・実施
⑨核兵器国の核軍縮措置(一方的核削減へのさらなる努力、非戦略核の削減など)
⑩余剰核分裂性物質の国際管理と処分
⑪究極的目標としての全面かつ完全軍縮
⑫核軍縮努力義務についての定期報告
⑬核軍縮のための検証能力の向上
(2009年5月12日朝刊掲載)
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