×

ニュース

「五輪通じ平和に貢献」 バッハ会長 広島で訴え コロナ禍 異例の訪問

 東京五輪に合わせて来日中の国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長が16日午後、広島市中区の平和記念公園を訪れ、原爆慰霊碑に献花した。被爆者と対面し、「東京五輪、パラリンピックがより平和な未来への希望の光になると確信している。五輪を通じて世界平和に貢献したい」とのメッセージを発した。核兵器の廃絶には触れなかった。(宮野史康)

 新型コロナウイルス禍での五輪開催に賛否両論がある上、緊急事態宣言中の東京都との往来自粛を広島県が呼び掛ける中、歓迎一色にならない異例の被爆地訪問となった。東京五輪・パラリンピック組織委員会の橋本聖子会長も同行した。

 バッハ会長は平和記念公園に到着し、広島県の湯崎英彦知事、広島市の小池信之副市長の先導で慰霊碑に献花した。原爆資料館では被爆者の遺品を含む展示資料を見学。東京五輪聖火リレー走者で被爆者の梶矢文昭さん(82)=安佐南区=と対談した。

 資料館1階でのスピーチでは、国連で採択された「五輪休戦決議」の期間が16日に始まったとし、スポーツや五輪を通じた世界平和への貢献を誓った。「あらゆる地球上の人間が広島を訪問すべきだ。平和がいかに重要かひしひしと感じられる」と語った。芳名録には「平和をリードしたい」と記帳した。

 市は訪問に伴い、16日午後に3時間、平和記念公園の一部範囲で一般市民の立ち入りを禁止し、資料館、国立広島原爆死没者追悼平和祈念館を一時閉館した。

 バッハ会長は今月8日に来日し、新型コロナ対応の緊急事態宣言が出ている東京都内に滞在している。県は県民に、宣言の対象地域との行き来を最大限自粛するよう求めている。平和記念公園周辺では今回のバッハ会長の広島訪問や五輪開催に反対し、複数の市民団体が抗議活動をした。

 県によると、現職のIOC会長の平和記念公園訪問は、1994年10月に市であった広島アジア大会時のサマランチ会長に続き2人目。組織委は当初、バッハ会長が初めてだと説明していたが、訂正したという。

 併せてIOCのコーツ調整委員長は、被爆地の長崎市を訪問した。

(2021年7月17日朝刊掲載)

[インサイド] 広島県 要望全て実現を評価 市長「黒い雨」救済優先

世界に発信を/感染拡大招く 市民に賛否

バッハ会長 「あの日」に涙 原爆資料館訪問 核廃絶触れず

バッハ会長スピーチ要旨 広島訪問

年別アーカイブ