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社説・コラム

駐広島韓国総領事に就任 林氏に聞く 文化・経済で民間交流を 韓国人被爆者の記録作る

 駐広島韓国総領事館(広島市南区)の新しい総領事に就任した林始興(イムシフン)氏(53)が、中国新聞のインタビューに応じた。日韓関係が冷え込む中、文化的、経済的な民間交流に尽力するとともに、高齢化が進む韓国人被爆者の証言の保存活動に取り組む考えを示した。(高本友子)

  ―初の日本赴任です。意気込みを教えてください。
 管轄する広島、山口、島根、愛媛、高知の5県は韓国と地理的に近く、歴史も長い。引き続き協力関係を深めたい。過去に日本勤務を希望したこともある。経済分野、特にものづくりにおける高い技術力と職人の姿勢を学びたかったからだ。マツダ(広島県府中町)をはじめ、広島は製造業が盛んだ。ぜひ企業を訪問し、歴史を学びたい。

  ―慰安婦問題などを巡り、日韓の政治関係がきしむ一方、日本ではK―POPなどの韓国文化がブームです。受け止めは。
 両国の関係が順調ではない状況は非常に残念だ。しかし国と国の関係は政治だけではなく、政治課題が他の領域に悪影響を及ぼすことがあってはならない。来日前から日本で韓国の大衆文化が人気と聞いてはいたが、書店の雑誌に韓国の芸能人が載っているのを見て実感した。互いの交流を拡大する余地は十分にある。

 総領事館はこれまで韓国映画の上映会や伝統文化の紹介などをしてきた。また広島市と大邱(テグ)広域市は姉妹都市であり、経済交流のための会議なども開いてきた。既存の活動を続けつつ、関係を発展させたい。

  ―北朝鮮の核開発に広島からどう向き合いますか。
 着任の初日に原爆資料館(中区)に行った。核の被害の展示を目の当たりにし、心に響いた。広島市民への平和への強い思い、希望も確認できた。

 北朝鮮の核開発が東アジア全体にとってどれほどの脅威なのか、われわれは何をすべきか知恵を絞り合うセミナーをやってみたい。

  ―韓国人被爆者も高齢化が進んでいます。どう対応しますか。
 韓国人被爆者は記録が体系的に整っていないという問題がある。原爆資料館には、韓国の被爆者援護活動に尽力した郭貴勲(カクキフン)さんの展示もある。彼をはじめとする韓国人被爆者たちについてもっと整った記録を作ろうと考えている。被害や証言を後世に残すため、市民有志たちとできる仕事をしたい。

林始興氏
 1968年韓国・ソウル市生まれ。高麗大卒。94年に外務部職員となり、海外赴任は中国、ブルネイ、米国に続き4カ国目。趣味は登山。着任早々、廿日市市・宮島の弥山に登った。妻と大学生の長男、長女はソウル市で暮らす。

(2021年7月19日朝刊掲載)

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