×

ニュース

被爆体験 聞き取り 追悼祈念館代筆事業 真っ黄色の世界に包まれた

 国立広島原爆死没者追悼平和祈念館(広島市中区)は20日、8歳で被爆したカトリック広島司教区(中区)の司祭深堀升治さん(84)=中区=から被爆体験を聞き取った。高齢の被爆者に代わり、被爆体験記を執筆する事業の一環。まとめた体験記は、来年3月末までに祈念館で公開する。

 救護活動に尽くした神父たちの企画展に合わせて、深堀さんに証言を依頼した。職員2人が約1時間半、祈念館で聞き取った。

 深堀さんは爆心地から約3キロの南観音町(西区)の自宅近くで被爆した。母の手伝いで知人に野菜を持って行く途中だった。「この世のものとは思えない真っ黄色の世界に包まれたように感じた」と振り返った。

 帰宅すると母と弟が血だらけで、皮膚がだらりと垂れ下がった多くの人を見たという。黒い雨を浴び「真っ黒いコールタールのようだった。『今度は油をまいて火を付けられる』とのうわさが出回った」と証言。終了後は「原爆投下が二度とないよう、今後も体験を語り継ぐ」と力を込めた。

 祈念館は代筆事業を2006年度に始めた。昨年度までに160人から体験を聞き取っており、本年度は8人を予定する。「被爆者が高齢化する中、一人でも多くの方の体験や平和への思いを後世に伝えていきたい」としている。(小林可奈)

(2021年7月21日朝刊掲載)

年別アーカイブ