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五輪会場で8・6黙とうを 広島の被爆者・市民呼び掛け 組織委「予定ない」

 23日に開会式がある東京五輪は、期間中に8月6日の原爆の日を迎える。被爆者や市民たちからは原爆投下時刻の午前8時15分に競技会場での黙とうを求める声が上がっており、国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長の広島訪問を受けてインターネットでの署名活動も始まった。一方で大会組織委員会は、黙とうの呼び掛けについて「予定はない」と素っ気ない。(余村泰樹)

 「日本で開かれる五輪期間中に原爆の日を迎える。それぞれの競技会場で、選手やスタッフが黙とうする祈りの時間を設けてほしい」。広島県被団協(坪井直理事長)理事長代行の箕牧(みまき)智之さん(79)は求める。

バッハ氏に望み

 箕牧さんは今月16日、平和記念公園(広島市中区)を訪れたバッハ会長を、立ち入り制限の柵の外で見届けた。バッハ会長のスピーチは核兵器廃絶に触れなかったが「原爆資料館を見学して感じたものはあるはずだ。被爆者として強くお願いしたい」と強調する。

 中国新聞は大会組織委に対し、8月6日の黙とうへの対応を尋ねた。19日夜にあった回答は「黙とうなどを実施する予定はない」。併せて質問していた理由についての言及はなかった。第二次世界大戦の被害者のうち原爆犠牲者だけに焦点が当たるとの懸念や、一人一人の心情に踏み込む行為が必要なのかという声に配慮した可能性がある。

 五輪会場での黙とうを巡っては、平和首長会議(会長・松井一実広島市長)が2016年のブラジル・リオデジャネイロ五輪の際、開会式と原爆の日の時間が重なるとして、会場での黙とうを呼び掛ける文書をバッハ会長に送っている。この時は実現しなかった。

 首長会議事務局は「リオ五輪では黙とうを求める現地の被爆者団体の動きに呼応し、文書を出した。今回は被爆者団体から要望がない」として、東京五輪の大会組織委などへの要請は検討していないとしている。広島市や県にも要望の動きはない。もう一つの県被団協の佐久間邦彦理事長は、新型コロナ禍での五輪開催そのものを問題視している。

ネット署名開始

 そんな中、広島市の秋葉忠利前市長(78)は16日、インターネットサイト「Change.org」で署名活動を始めた。全選手や大会関係者、世界の人々が8月6日に黙とうし、原爆をはじめ全ての戦争犠牲者の慰霊と、核兵器廃絶を柱とした世界平和実現の決意を示すよう提案している。

 署名は21日午後5時現在で3千人を超えた。秋葉前市長は「コロナ禍で反発がある中、IOC会長の立場で広島を訪れたバッハ氏には被爆地のメッセージを五輪で発信する責任がある。平和の祭典を掲げるなら、会場での黙とうは最低限必要だ」と主張している。署名サイトのアドレスはhttp://chng.it/Z6qxxDQZ

(2021年7月22日朝刊掲載)

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