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[ヒロシマの空白 被爆76年 証しを残す] 軍都・被爆… 歴史触れる サカスタ遺構説明会

 サッカースタジアム建設予定地の中央公園広場(広島市中区)の発掘調査で見つかった旧陸軍の輸送部隊「中国軍管区輜重(しちょう)兵補充隊(輜重隊)」施設の被爆遺構で、広島市は24日、市民たち向けの現地説明会を初めて開いた。事前に申し込んだ64人が、軍都の姿や原爆投下による壊滅の歴史が刻まれた遺構を確認した。

 公開したのは、戦地で軍需品の輸送を担う軍馬を飼っていた厩舎(きゅうしゃ)や馬の水飲み場が出土した発掘現場の東側エリア。市からの委託で調査している発掘業者の担当者が、厩舎の跡で馬をつなぐための角柱などが確認されたと紹介した。

 広島県海田町の名越悟さん(72)は、2015年に亡くなった父が現在の庄原市から召集されて入隊していた。「父から『馬がたくさんいて広かった』と聞いており、実感できた。石畳から馬のひづめの音が聞こえてきそうだ」と見入った。

 広島文学資料保全の会代表の土屋時子さん(73)=中区=は見学後、輜重隊の原爆犠牲者を悼む花束を、発掘現場を囲む柵に据えた。

 市によると、この日の説明会(2回定員計60人)と25日に市施設で開く報告会(定員50人)には計208通の参加希望があり、説明会は定員を増やした。市文化振興課は「どちらにも参加できなかった市民のため、市のホームページ(HP)などでの遺構の紹介を検討する」としている。

 市は当初、6月の説明会開催を探ったが、新型コロナウイルスの感染拡大を理由に見送った。その後、調査日程を理由に説明会をしないまま遺構を撤去するとしていたが、市民団体の相次ぐ要望で開催に転じた。遺構は一部を切り取って保存する方向となっている。(水川恭輔)

(2021年7月25日朝刊掲載)

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