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[コロナ禍の8・6] 「あの日」の記憶 伝承誓う 国泰寺高で広島一中の死没者慰霊祭 当時の生徒 訃報続く

 広島市中区の国泰寺高で25日、前身の旧制広島一中の原爆死没者慰霊祭があった。近年、76年前の「あの日」を身をもって知る当時の一中生の訃報が相次ぐ中、参列者は犠牲者を追悼し、平和への誓いを新たにした。(余村泰樹)

 遺族、同窓会員たち約70人が、校内の慰霊碑「追憶之碑」前に並んだ。碑には2月、児玉光雄さん(2020年に88歳で死去)と下迫次郎さん(19年に86歳で死去)の名前が新たに刻まれたばかり。原爆投下当日に校舎で被爆した当時の1年生では、2人が最後の生存者だった。

 2人は生前、慰霊祭で毎年のように顔をそろえた。児玉さんは、腰椎を骨折した直後だった昨年も車いすで参列し、主催する鯉城同窓会に「仲間と一緒にしてほしい」と、碑への記名を望んだという。この日は児玉さんの妻淑子さん(83)が出席し、「平和を願った夫の思いが世界に届いてほしい」と手を合わせた。

 今月17日には、当時2年生で、長年慰霊祭で追悼の辞を述べてきた福間駿吉さんも89歳で亡くなった。福間さんに代わって急きょ、同級生代表として献花した才木幹夫さん(89)=中区=は「当時を知る人が少なくなった。原爆の悲惨さを伝承していかなくては」と誓った。

 一中で原爆死した生徒は353人、教職員は16人に上る。在校生代表の2年横山宗弘さん(16)は「76年前の記憶を過去のものとせず、自分ごとと捉えて二度と戦争の起こらない世の中にするために何ができるか真剣に考えたい」と語った。

(2021年7月26日朝刊掲載)

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