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安倍政権、核廃絶や被爆者援護へ問われる本気度

 安倍晋三首相は6日、首相として2度目の「原爆の日」を迎える。昨年12月の第2次内閣発足以降、核兵器廃絶を目指す強いメッセージは首相から聞こえない。先の参院選で衆参のねじれ解消を果たし、長期政権をにらむ首相。原爆の日に臨む首相の姿勢は、核廃絶や被爆者援護をめぐる政権の本気度を示す指標になる。

 日米同盟の強化を外交の基軸に据える安倍首相。米国への日本政府の配慮を示す出来事が4月にあった。核拡散防止条約(NPT)再検討会議の準備委員会で、日本は「核兵器の人道的影響に関する共同声明」に賛同しなかった。

 「いかなる状況下でも核兵器が再び使用されないことが人類生存に寄与する」。当たり前の一文が、米国の「核の傘」にある日本の安保体制と相いれないと判断した。

 5月末には、NPTに加盟していない核保有国のインドと原子力協定の交渉を再開することも決めた。広島市の松井一実市長、長崎市の田上富久市長は、ことしの平和宣言で再開に懸念や批判を打ち出す。

 被爆地の願いから離れた政策判断が目立つ安倍政権。「基準が厳しすぎる」との声がある原爆症認定制度の見直しも、明確な道筋は見えない。

 2008年に認定要件が大幅に緩和されたにもかかわらず、今も却下が相次ぐ。ただ、その緩和は安倍首相が07年8月、被爆者と懇談した際に制度見直しを表明したことが契機となった。

 自民党「被爆者救済を進める議員連盟」の寺田稔代表世話人(広島5区)は「救済を進めるという指示を首相に出してほしい」と期待する。

 安倍首相にとって前回の「8月6日」は、直前の参院選で大敗した中で迎え、直後に退陣した。今回は一転、長期政権を視野に入れる。被爆地でどんなメッセージを発信するのか。それは、核兵器廃絶や被爆者援護の取り組みについて政権の姿勢が問われる。(城戸収、藤村潤平)

(2013年8月2日朝刊掲載)

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