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有識者会合 行方焦点に 厚労省の科学的検証

 菅義偉首相による「黒い雨」訴訟の上告断念を受け、国の援護対象区域(大雨地域)を再検証する厚生労働省の有識者会合の行方が焦点となる。首相は区域外で被害にあった原告への被爆者健康手帳の交付に加え、同様の被害者の救済にも踏み込んだ。実質的な区域拡大指示によって、「科学的知見」をよりどころとする検討会合の立ち位置の再定義が迫られそうだ。

 検討会合は、原告が全面勝訴した昨年7月の一審判決を受け、厚労省が援護対象区域の拡大も視野に入れて設置した。被爆直後の気象を再現するコンピューターシミュレーションなどで対象区域を見直しているが、これまでに思うような成果を出せず、検証期限すら示せていない。

 広島県の湯崎英彦知事は首相との面会後、首相が幅広い被害者の早期救済を打ち出した点を踏まえ、検討会合について「ある意味(区域拡大の)結論が見えている」と指摘。広島市の松井一実市長も、厚労省と今後の進め方、救済の対象や手続きの考え方などを相談する必要があるとした。

 一方で田村憲久厚労相は、二審判決後の記者会見で判決に関係なく続行させる意向を示している。同省原子爆弾被爆者援護対策室は「県と市の考えはしっかり聞いていく」とする一方、「被爆者認定には何らかの基準が必要で、現時点で検討会合は必要だと考えている」とした。(樋口浩二、境信重)

(2021年7月27日朝刊掲載)

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