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「被害者早く救って」 原告団 会見で訴え

 「黒い雨」を巡る訴訟で菅義偉首相が上告断念を表明したのを受け、原告団と弁護団は27日、広島市中区で記者会見を開いた。被爆76年を前にした政治決着を歓迎し、原告以外の黒い雨被害者の早期救済を求めた。

 原告団の高野正明団長(83)=広島市佐伯区=は「訴えてきた真実が伝わった。長く見守っていただき心から感謝している」と述べた。原告の一人、高東征二さん(80)=同=は、菅首相が黒い雨の被害を訴える人を広く救済する考えを示したことに「同じように雨を浴び、裁判を見守っている人に早く手を差し伸べてほしい」と語った。

 国が黒い雨に遭った人の援護対象区域を指定した2年後の1978年、区域外の住民で被害者の会の協議会が設立された。設立時から参加した高野団長たちは、救済を求めて国などへの要望活動を続けてきた。

 2015年に広島地裁に提訴して約6年。原告はこれまでに19人が亡くなり、老いを深める。弁護団の竹森雅泰弁護士は「(亡くなった原告と)一緒にこの日を迎えられなかったのが悔しい」と唇をかんだ。国に対し「黒い雨を浴びた全員が裁判に訴えることなく速やかに被爆者健康手帳を受け取れるよう、法改正などの手続きを急いでほしい。必要な協力は惜しまない」と訴えた。(根石大輔)

(2021年7月28日朝刊掲載)

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