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「被爆の証人」傷み激しく 広島大旧理学部1号館公開

市議会視察 保存活用策を検討

 広島大本部跡地(広島市中区)にある被爆建物の旧理学部1号館の傷みが進んでいる。東広島市への移転に伴い21年前に閉鎖。市がことし4月、国立大学財務・経営センター(千葉市)から建物と敷地の無償譲渡を受け、保存、活用策を検討する。1日、市議会建設委員会が視察で内部に入った。(文・田中美千子、写真・井上貴博)

 8人の市議は、普段立ち入り禁止となっている館内を約40分間かけて回った。窓ガラスは至る所で割れ、天井は抜け、廊下はタイルが剝がれていた。講義室には動物の骨。机の天板も朽ちていた。

 1号館は鉄筋3階建て延べ約8300平方メートル。1931年に広島大の前身、広島文理科大の本館として完成した。爆心地から1・4キロで、外郭を残して全焼した。

 補修され、翌46年から講義で活用された。91年に理学部が東広島キャンパス(東広島市鏡山)へ移転、翌年閉鎖された。以後は文部科学省の外郭団体などが管理をしてきた。

 視察を終えた建設委の委員には、「原爆被害を伝える財産として活用すべきだ」「多額になる費用を考えると全面保存は現実的ではない」との声が入り交じった。市は本年度、コンクリートの劣化度や構造調査に750万円を予算化。調査後に結論を出す時期は決めていない。

(2013年8月2日朝刊掲載)

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