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「政府も締約国会議に」86% 核禁条約 被爆者団体アンケート 被爆実態 訴え求める

 今年1月に発効した核兵器禁止条約で、全国の被爆者団体の9割近くが日本政府に対し、まずはオブザーバーの形でも参加するべきだと考えていることが28日、中国新聞社のアンケートで分かった。日本政府が条約の署名・批准に背を向ける中、せめてオブザーバーとして締約国会議に参加するなどして禁止条約に関わり、被爆の実態を訴えるよう求める被爆者の切実な思いが浮き彫りになった。(久保田剛)

 アンケートは被爆70年の2015年以降、原爆の日を前に毎年、各都道府県の被爆者団体と中国地方5県の地方組織を対象に実施している(西日本豪雨で見送った18年を除く)。今年は104団体に協力を依頼し、93・3%に当たる97団体から回答を得た。

 禁止条約は、署名・批准していない国も締約国の会議などにオブザーバー参加できると定めているが、米国の核の傘に依存している日本政府は消極的だ。アンケートで禁止条約について「日本政府は、まずはオブザーバーとして参加するべきだと思うか」と尋ねたところ、86・6%の84団体が「思う」と答えた。

 理由として、広島県被団協(坪井直理事長)は「署名・批准を望むが、できなくてもまずはオブザーバー参加してほしい。被爆国日本としての関心を世界に示すことになる」を挙げた。もう一つの県被団協(佐久間邦彦理事長)は「原爆の悲惨を訴え、その恐ろしさを訴えるべきだ」と記した。福山市原爆被害者友の会は正式参加を望むとしながら「とにかく参加するのが大切。それが被爆国の責任」とした。

 「思わない」は10・3%の10団体。オブザーバー参加の意義を疑問視したり、影響力の乏しさを懸念したりする声があった。静岡県原水爆被害者の会は「批准で正式参加するべきだ」と説いた。無回答が3・1%の3団体だった。

 「被爆80年となる4年後も活動を継続できるか」との問いでは、41・2%の40団体が「できない」とした。理由(複数回答)は「会員の高齢化」が97・5%で最も高く、「後継者がいない」が75・0%で続いた。

 厚生労働省によると、被爆者健康手帳を持つ被爆者は3月末時点で12万7755人となり、初めて13万人を下回った。平均年齢は過去最高の83・94歳。団体の活動に、被爆者の高齢化が大きく影響している実態があらためて浮かんだ。

 ≪調査の方法≫6月下旬からアンケート用紙を郵送し、返信に加えて、一部は電話や対面で聞き取りをした。送付先は、日本被団協を構成する各都道府県組織やオブザーバー参加している広島県被団協(佐久間邦彦理事長)、県単位での活動がない山形県で日本被団協と連絡を取り合う鶴岡市の「つるおか被爆者の会」、中国地方5県の各県組織の支部や地域の会など計104団体。被爆70年に合わせて初めて実施した2015年は計125団体だったが、相次ぐ解散などで減少してきている。

核兵器禁止条約

 核兵器の使用や威嚇、保有を違法とした初の国際条約。2017年7月7日に国連で採択され、今年1月22日に発効した。前文で「ヒバクシャの受け入れ難い苦しみに留意する」と明記し、核兵器の開発なども全面的に禁止する。第8条5項では、日本政府のような非締約国や国連機関、非政府組織も、2年に1回の締約国会議や発効5年後の再検討会議にオブザーバーとして参加を認める規定を設けている。

(2021年7月29日朝刊掲載)

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