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黒い雨訴訟 判決が確定 広島市・県 上告しない意見書

 広島への原爆投下後に降った「黒い雨」を巡る訴訟で、被告の広島県と広島市は28日、原告84人全員を被爆者と認めて被爆者健康手帳の交付を命じた広島高裁判決に対し「上告する必要はない」との意見書を、それぞれ広島法務局に送った。菅義偉首相は既に上告断念を表明しており、高裁判決は29日午前0時に確定。今後、原告以外に黒い雨の被害を訴える人や、国が指定した地域の外で原爆に遭った長崎の「被爆体験者」の認定の在り方が焦点となる。

 意見書は湯崎英彦知事と松井一実市長名。高裁判決について「被爆者援護の立場から上告する必要はないと考える」などとした。訴訟手続きの一つで、県市とも法務局からの要請を受けて送付した。

 高裁判決は、黒い雨を巡る初の司法判断となった昨年7月の一審広島地裁判決を支持し、被告の国、県、市の控訴を棄却。黒い雨は1976年に国が指定した援護対象区域よりも広範囲に降ったとし、国の「線引き」の妥当性を否定した。

 さらに被爆者認定は「放射能による健康被害が生じることを否定できないと立証すれば足りる」と判断。内部被曝(ひばく)による健康被害の影響を重視し、一審判決が認定要件としたがんや白内障など11疾病の発症にとらわれず、雨に遭った人は被爆者と認めるべきだとした。

 県市は14日の高裁判決後、上告を働き掛ける国に対し、断念するよう求めていた。菅首相は26日、上告断念を表明。27日には原告以外の黒い雨被害者の被爆者認定についても「訴訟への参加・不参加にかかわらず認定し、救済できるよう早急に対応を検討する」との首相談話を閣議決定した。認定基準の指針改定に向け、国は関係自治体と協議する考えだ。(松本輝)

(2021年7月29日朝刊掲載)

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