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時の家族の生き抜く姿 水谷豊・伊藤蘭が夫婦役「少年H」 10日公開

30年ぶり共演 息ぴたり

 妹尾河童の自伝的小説を映画化した「少年H」(10日公開)。日本が戦争へと突き進む時代を、流されることなく生きようとした家族の物語だ。一家の要となる夫婦を演じたのは、結婚25年目の水谷豊(61)と伊藤蘭(58)。「人間の強さと家族の絆を感じてほしい」。約30年ぶりの共演であうんの呼吸をみせる。(松本大典)

 「還暦祝いに一緒に出てくれないか」。ドラマ「事件記者チャボ!」(1983~84年)以来の共演は、水谷の誘いで実現した。原作者もスタッフも強く望んだキャスティングだった。

 「作品の邪魔になるんじゃないか」と、夫婦での共演はこれまで考えてもみなかったという。が、今回は違った。「原作を読むと、妻役にはどうしても蘭さんが浮かぶ」と水谷。そばで伊藤が笑う。「一生懸命なんだけど、どこか抜けていて。それを笑ってごまかすおおらかさも、確かに私に似てる」

 水谷が演じる主人公の妹尾盛夫は、神戸で外国人ももてなす洋服の仕立屋。伊藤が演じる妻敏子は教育熱心なクリスチャン。「少年H」に当たる好奇心旺盛な息子の肇(吉岡竜輝)、娘の好子(花田優里音)も一緒に、少し浮世離れした4人家族をほほ笑ましく描く。

 そんな一家にも戦争は忍び寄る。軍事統制が厳しくなり、生活は一変。そして神戸大空襲。焼け尽くされた街の光景は、被爆地や被災地も思わせる。  「築いてきた価値観が吹っ飛び、どう生きたらいいか分からなくなっただろう。それでも人は立ち上がり、結果、今がある」。水谷は、「人間の素晴らしさ」を熱く説く。

 「映画ではちゃぶ台を囲むシーンもたくさん出てくる」と伊藤。「どんなときも支え合う家族の姿こそ、人がたくましく生きていくための原動力に思える」と実感を込めた。降旗康男監督。

(2013年8月3日朝刊掲載)

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