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被服支廠の経緯 映像に 皆実高放送部 保存か解体か ドキュメンタリー 「知るきっかけに」

 広島市南区の皆実高放送部が、学校近くにある最大級の被爆建物「旧陸軍被服支廠(ししょう)」をテーマにしたドキュメンタリー映像を作った。保存か解体かで揺れてきた経緯を丹念に記録した。8月4、5日に和歌山県である全国高校総合文化祭(総文祭)の放送部門への出品が決まっており、部員たちは「被服支廠について知ってもらうきっかけになれば」と願う。(高本友子)

 「赤レンガから君へ」と題した作品は約5分間。戦後、校舎として使っていた県立広島工業高の卒業生や保存活動をする市民の声を取り入れたほか、耐震化に巨額な費用が掛かることにも言及した。建物自体を話し手にした作りで、最後には「僕が建っている意味を考えてほしい」などと語り掛ける。

 2019年12月に県が一部解体案を公表し、存廃議論が巻き起こる中で昨年夏に制作を始めた。主導した元部長の3年相原歩海さん(18)は「話題になっていたのに、どんな建物か知らなかった。自分の知識を深めるためでもあった」と振り返る。保存か解体かを巡ってはさまざまな見方があることを踏まえ、両方の意見を盛り込むよう意識したという。

 作品は昨秋の県高校放送文化コンクールのオーディオピクチャー部門で最優秀賞に輝き、総文祭への出場資格を得た。

 今年5月、県は従来の方針を転換し、3棟を耐震化する方針を表明。残る1棟を管理する中国財務局は、県市などとの議論を踏まえ方針を決める見通しだ。相原さんは「残したい人たちの思いを聞いていたので、うれしかった。被服支廠を残す意味が広く考えられるよう、一般の人が利用しやすい場所になってほしい」と話している。

 旧陸軍被服支廠 旧陸軍の軍服や軍靴を製造していた施設。爆心地の南東2・7キロにある。13棟のうち4棟がL字形に残り、県が1~3号棟、国が4号棟を所有する。県は建物の劣化が進み、地震による倒壊などの危険があるとして2019年12月に「2棟解体、1棟の外観保存」とする安全対策の原案を公表。21年5月に事実上撤回し、3棟を耐震化する方針を示した。1棟につき概算で5億8千万円を投じ、内部を見学できるようにする。

(2021年7月31日朝刊掲載)

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