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社説・コラム

[核禁条約 私の国では] 韓国 黄琇暎(ファンスヨン)さん

関心は北朝鮮の核脅威

 韓国は日本と同様に米国の「核の傘」に依存し、米軍基地も置かれている。国民の関心事は、北朝鮮による核・ミサイルの脅威。文在寅(ムン・ジェイン)政権は、核兵器禁止条約に対して消極的な姿勢を見せている。

 国民の間でも条約への関心は低いのが実情だ。2020年9月、韓国元外相の潘基文(バン・キムン)前国連事務総長をはじめ、各国の元首脳や元官僚たち56人が条約支持を表明し、自国の指導者に参加を求める連名の書簡を全世界に発表した。この機会を捉えて、国内メディアを通じて懸命に情報を拡散した。

 ただ、核兵器禁止条約だけで核問題を解決できないことも確か。「休戦」状態が続く朝鮮戦争を正式に終わらせることなど、重要課題はいくつもある。

 昨年、休戦協定から70年となる23年を目標に世界中から署名を集めようと、私が所属する非政府組織(NGO)「参与連帯(PSPD)」が中心となって「朝鮮半島平和宣言(KOREA PEACE APPEAL)」キャンペーンを開始した。「核兵器も核の脅威もない朝鮮半島と世界を」などと呼び掛けており、日本からもオンラインでぜひ加わってほしい。国連などに提出する予定だ。

 PSPDは、朝鮮半島はもとより、日本を含む北東アジア地域の非核兵器地帯化を目指している。市民の間の信頼醸成が、その第一歩。毎年、北朝鮮の市民団体と交流の機会も持っている。北朝鮮政府の許可が必要であるため、南北関係が悪化すればつながりを絶たれる可能性もあるが、この枠組みを大切にしたい。

 韓国には、北に対抗して核を持つべきだと主張する声がある。核兵器禁止条約は、そのような違法兵器の保有はどの国も許されない、という国際的な規範となる。世界的に核兵器をなくしていくための条約と、私たちの地域の平和と非核化への努力。諦めずに推し進めていく。(新山京子)

(2021年8月2日朝刊掲載)

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